用語解説7―18話~20話編
<18話 一歩踏み出す勇気>用語解説
〇恋愛小説をたくさん読んでいる菜々子
当時(主に1910年代)の女学生によく読まれていた作家は
他にも女学生が読んでいた作品はたくさんあり、夏目漱石の『吾輩は猫である』『坊つちやん』、樋口一葉の『たけくらべ』、吉屋信子の『花物語』(前に紹介した、少女たちのエスを描いた物語)などを愛読していた。また、昭和に入ると、川端康成の少女小説『乙女の港』(中里恒子という女流作家の草稿に川端康成が手直しや指導をした作品)が人気だった。
また、『レ・ミゼラブル』などの海外小説も女学生たちは旺盛に読んだ。
〇クリスマスの思い出
現代の我々が考えているよりもはるかに、クリスマスは当時の庶民に浸透していた。
明治の末には銀座でクリスマスのイルミネーションが飾られ、不二家ではクリスマス・ケーキが登場した。
サンタクロースも「子供たちにプレゼントをくれるおじさん」として子供たちに知られ、児童雑誌や絵本にも登場している。大人たちは新聞や百貨店の広告を見て、子供たちへのプレゼント(タイプライターのオモチャみたいな洒落たものもあった)を買った。
あと、大正期の子供向けの本にはクリスマスにまつわるお話もたくさん載っている。
百貨店のイベントにもサンタの扮装をした店員がいた。
帝国ホテルでは、クリスマスパーティを毎年行なっていて、私の短編『大正十年のメリークリスマス』(https://kakuyomu.jp/works/1177354054882205552)では帝国ホテルのクリスマスパーティーが描かれている。
この短編では、桜子の先輩・柊子がヒロインとして活躍するので、興味のある方はぜひご覧あれ。
〇この時代の女の子は、十五歳になったら結婚が可能だった。
昭和22年(1947年)の民法改正以前は、男は17歳、 女は15歳で結婚可能だった。
〇縁談がまとまると、親の言いつけにしたがい、学校を退学してすぐに結婚するというケースも多くあった。
この時代、女学校を途中で退学して結婚することは珍しくなかった。美人はすぐに縁談がまとまり、結婚のために学校を辞める……ということがよくあった。
ちなみに、あまり美しくない人のことを学習院女学部では「
ちょっとドン引きするぐらい陰湿ですね……。
<19話 カスミ>用語解説
〇スペインかぜ
第一次世界大戦の時期、世界を恐怖に陥れたパンデミック。世界の人口の約50%が感染し、25%が発症したとされ、死者の数は2千万、5千万など諸説ある。
1918年3月にアメリカ合衆国の北西部で出現。アメリカ軍の兵士とともにヨーロッパに渡る。西部戦線で多数の死者を出したことで、戦争の終結を早めたといわれている。
スペインでの感染が大きく報じられたことからスペインかぜと呼ばれた。
日本では、1918年(大正7年)の11月ごろから大流行した。約3年間で、人口の半数2380万人が病にかかり、40万人前後が死亡した。
犠牲者の中には、西郷寅太郎(西郷隆盛の嫡男。侯爵。陸軍大佐)、大山
ちなみに、島村抱月と不倫関係にあった女優の松井須磨子は、抱月がスペインかぜで死ぬと、2か月後にあと追い自殺をした。
<20話 柳一、たおれる>用語解説
〇電話の通信回線をつないでくれる交換局に電話がつながり、交換局の交換手が話したい相手の家の電話に回線をつないでくれた
日本で電話交換サービスが開始したのは、明治23年(1890)のこと。
ちなみに、電話交換のサービスができた頃、電話の交換手は、電話をかけた人とつながると、「もしもし」ではなく「おいおい」と答えていたらしい。当時の人たちも「なんか、感じ悪い……」と思っていたっぽい。
後に男性の交換手がいなくなり、女性たちが交換手を務めるようになると、「申し上げます、申し上げます」と言うようになった。これが転じて「もしもし」となったらしい。
〇現代では全国的に有名な高級牛肉・松阪牛
江戸時代、農耕用として
明治時代になり、人々が牛肉を食べるようになると、食用の肉牛として売られるようになった。明治初期には、2か月に1回、松阪から東京まで100頭以上の牛を連れて行き、売ったそうである。
当時、日本中で肉牛の品評会が開かれ、松阪牛は多くの品評会で入賞した。
昭和10年(1935)に東京で開かれた大きな博覧会で優勝したことで松阪牛の名声は大いに高まった。
参考:松阪市ホームページ
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