用語解説6―15話~17話編

<15話 桜子、男子学生と対決する>用語解説


○図書館

明治32年(1899)、図書館令が公布され、道府県および市町村・私人・学校が図書を蒐集しゅうしゅうして図書館を設置できること、公立図書館は閲覧料を徴収できることが認められた。また、当時の図書館の多くは本の貸出を行なっていなかった(ただし、設立当初から本の貸出を行なっている図書館もあったようである)。

明治41年(1908)、東京市立日比谷図書館が開館。一般人向けの図書館として、新聞閲覧室・児童室・婦人閲覧室などを館内に置いた。

明治43年(1910)には、日比谷図書館が本の館外貸出を開始。

大正時代に入ると、東京市立の図書館だけでなく、各地方の公立図書館でも、閲覧料の無料化を実施する図書館が増えていった。(といっても、全ての図書館が無料化したわけではないし、新聞雑誌閲覧や児童閲覧など一部だけ無料化する図書館もあった)



〇本が読める閲覧室がいくつかあって、一般の閲覧室、女性用の婦人閲覧室、新聞や雑誌が読める新聞雑誌室、子供用の児童閲覧室がある

当時の図書館は、他にも、食堂や喫煙室を設けているところもあったようである。



〇女なんて見栄で女学校に通っているだけで、将来は結婚して家庭に入るのだから、学問なんて不要でしょう

当時の識者たちは、「女子たちは自らの虚栄心と良い結婚相手探しのために学問をしている」という論調で女子教育を批判することが多かった。

紅鹿子という人物が『中央公論』(1905年3月号)に載せた記事には、「女子大学生の名を便たよりに男子の注目を惹かう、忌憚きたんなく云えば惚れて貰はうとの野心がある、その野心がそもそもの誤解である」とある。

特にミッション系の学校に通う女学生が、「良妻賢母」からかけ離れた「堕落女学生」として結びつけられることが多かったようである。

当時の人たちは、「女学生たちが、裁縫や家事などの女子に必要な知識をおろそかにして、非実用的な学問やハイカラ文化に興味を示すのは軽薄だ」と考える傾向があったようだ。

参考:『女学校と女学生 教養・たしなみ・モダン文化』(著・稲垣恭子 出版・中公新書)






<16話 柊子と柚兄様>用語解説


〇福沢諭吉もこう言っているではありませんか。『一身独立して一国独立す』と

国民の一人一人が自立し、学問をして賢くならなければ、日本は近代国家として自立できない、という意味。

また、福沢諭吉は「官私を問わずまず自己の独立を謀り、余力あらば他人の独立を助け成すべし。父兄は子弟に独立を教え、教師は生徒に独立を勧め、士農工商ともに独立して国を守らざるべからず」とも述べている。





<17話 恋愛をしたら不良!?>用語解説


〇恋愛なんて、堕落した女学生と不良の男子学生がすることです!

当時、恋愛で身を持ち崩す女学生のことを「堕落女学生」と呼び、そんな女学生を誘惑する男子学生を「不良学生」と呼んだ。

新聞でも女学生がらみの恋愛スキャンダルを取り上げ、人々は「女学生はおしゃれなどで外見を飾る虚栄心のせいで、男に誘惑されて堕落していくのだ」などと侮蔑した。

参考:『女学校と女学生 教養・たしなみ・モダン文化』



〇恋愛小説なんて教育に悪い本、学生が読むのを禁止すべきだ!

明治期には、実際に、全国高等女学校校長会議で、「女学生が小説を読むのはいっさい禁止!」という方針を出している。

教科書以外の本を学校に持って来るのはダメで、見つかったら叱られる……ということもあったようである。

図書館に行って小説を読もうとしても、またもや「女が図書館へ行くなんて虚栄心うんぬん……」と批判される始末だった。

しかし、少女たちの文学への熱望が高まり、少女雑誌が次々と刊行されるようになっていくと、学校側も「小説は全面的に禁止!」とは言えなくなっていった。教育者側も「読書が彼女たちにとって有益になるように教育していくのがいいのではないか」と考える人が増えていったようである。

ただ、1920~30年代になっても、相変わらず「恋愛小説は禁止!」と言っている学校もあったようだが……。

参考:『女学校と女学生 教養・たしなみ・モダン文化』

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