用語解説5―13話~14話編
<13話 一人ぼっちの誕生日?>用語解説
〇仙造は菜々子に一通の手紙を手渡した
当時の女学生たちにとって、手紙のやりとりは非常に重要なコミュニケーション方法で、学校の内外において、友達同士で頻繁に手紙の送り合いをしていたらしい。そして、真心をこめて書いた手紙で、自分の胸の内を信頼できる級友や先輩に明かし、友情を深めたのである。
郵便屋さんが手紙を届けに行くと、手紙の送り主がその家にいて、「さあ、〇〇さん! わたしの手紙が届いたから読んで! いまさっき、手紙に書いてあった用事はぜんぶ話しちゃったけど!」とせがんだ……という笑い話が少女雑誌『少女の友』に載っている。
<14話 菜々子の涙>用語解説
〇学生寮の管理人である白鳥椿先生
この先生にはモデルがいる。東洋英和女学校の裁縫教師・加茂令子である。
令子の父親は長尾藩(明治維新の時期に短期間存在した安房国の藩)の藩士で、19歳の頃に裁縫塾を卒業。23歳の頃(1894年)、東洋英和女学校の裁縫教師となる。1896年に寄宿舎の寮母となり、1936年に引退するまでの42年間、教師と寮母をつとめた。
令子が寮母の時代に、『赤毛のアン』の翻訳者・村岡花子も東洋英和女学校の生徒だった。
〇麻布十番の商店街
花町(芸者町)もあり、かなり賑わっていたらしい。
関東大震災では大きな被害を受けず、人口が流入した。震災後はデパートや活動写真館などもでき、大いに繁栄した。
ちなみに、アニメ『大正野球娘。』の主人公・鈴川小梅は麻布十番にある洋食屋の娘という設定である。
〇フルーツパーラー
果物店を兼ねた喫茶店。明治27年(1894)に銀座
銀座千疋屋、新宿高野フルーツパーラー(大正15年営業開始)など、今でも続いている老舗フルーツパーラーがある。
また、東大の正門前にある万定フルーツパーラー(創業大正3年)は、フルーツパーラーを名乗っているが、カレーとハヤシライスが名物らしい。(手搾り天然ジュースなど、フルーツパーラーらしい品もある。行ってみたい……)
〇ケーキ
『おばあちゃん伝授の大正ロマンハイカラおやつ』(監修・岩崎藤子 出版・日本ヴォーグ社)によると、現在ほど生クリームは使わず、チョコレートやジャム(かりんジャム、葡萄のジャムなど)をぬった。
誕生日やクリスマスなど特別な日には、いちごなどの果物で飾ったという。
〇イチゴミルクのジュース
当時、牛乳屋が家の勝手口の小箱に牛乳を配達していき、朝に牛乳を飲む習慣はできつつあった。
そんな牛乳をおやつとして飲む時、イチゴミルクやバナナミルクを作ったようである。(『おばあちゃん伝授の大正ロマンハイカラおやつ』より)
〇シュークリーム
当時は高級洋菓子の仲間だったようである。
この時代にも食品の品質問題が生じていたようで、大正13年(1924)に、シュークリームによる子供の中毒事件が続発している。警視庁が一斉検査したところ、多くの菓子店で銅鍋が不合格となり、取り換えを命じられた。
参考は『近代日本食文化年表』(著・小管桂子 出版・雄山閣)
〇ドーナツ
ドーナツは当時でもおやつとして人気で、よく自分たちで作って食べたらしい。
あんドーナツが女学校の購買で販売されており、女学生たちに大人気だった。
(『おばあちゃん伝授の大正ロマンハイカラおやつ』より)
〇マシュマロ
日本にマシュマロを広めたのは、森永の創立者・森永太一郎。
森永のシンボルマークであるエンジェルマークは、アメリカでマシュマロが「エンジェルフード」と呼ばれていたことに由来する。
(『おばあちゃん伝授の大正ロマンハイカラおやつ』より)
〇ホットケーキ
ホットケーキは昔から大人気のおやつだった。
ちなみに、銀座のオモチャ屋に売っていたおままごとセットは、アルコールランプでホットケーキや目玉焼きが作れたそうである。
(『おばあちゃん伝授の大正ロマンハイカラおやつ』より)
〇流行歌
松井須磨子の代表曲である『カチューシュの唄』や『ゴンドラの唄』、北原白秋作詞の『さすらいの唄』、女学生に特に人気だった『ばらの唄』、竹久夢二作詞の『宵待草』、関東大震災後に流行した『月の砂漠』などがあり、レコードによって女学生たちも歌を楽しんでいたと思われる。
『ゴンドラの唄』は恋愛歌謡としても拙作『花やぐ愛は大正ロマン!』に合う歌だなぁと思っている。作中で主人公たちに歌わせたいと考えたが、歌詞の引用とか大丈夫かしらんと臆病になり、やめておいた。(著作権は切れているようだけれど、何か別の問題でどこかに怒られるかもとか色々と心配しちゃうチキンハート……)
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