用語解説2―4話~6話編

<4話 こんなのお姉様じゃない!!>用語解説


〇いまだに西洋料理よりも和食のほうがなじみのある時代だった

といっても、女学校では日本料理だけでなく西洋料理の授業があり、スポンジケーキの作り方なども教わっていたようである。ガスや天火てんぴ(今のオーブン)などの設備も教室にはしっかり整っていた。

女学生たちは学校で習ったお菓子などを家庭でもチャレンジしていたはずである。そして、結婚したら、夫や子供たちに食べさせたはずだ。

彼女たちが大人となり、家庭に西洋料理を伝え、ちょっとずつ日本の食文化に西洋料理が浸透していったのだろう。





<5話 桜子、やんやん怒る>用語解説


天火てんぴ

今でいうオーブン。

以下、『家庭應用おうよう 洋食五百種』(著・赤堀吉松 出版・新橋書店 発行年・1907年)から天火の説明文を抜粋。

「これは鉄板製の蒸焼むしやきの器具にして、その形状はさまざま」

「西洋食器販売店あるいは改良かまどをひさぐ店にて得らるるものにて、もっとも必要なるものなり」

「その大きさは普通は一尺五六寸ぐらい(1辺がおよそ50センチ)」

七輪(この頃はガス七輪か)を下に置いて加熱し、上にも炭を置くことで、上下から熱を加えた。

後にガスや電気で直接加熱するものも登場する。



〇『だんな様のほっぺたが落ちる和洋料理の作り方~新婚編』

桜子が愛読している料理の本。もちろん、実際にそんなふざけたタイトルの料理本は無かった。

ロースト・ビーフのその当時の調理法は、『実用料理法』(著・梶山彬 出版・盛林堂 発行年・1919年)を参考にした。



〇晩ご飯にしましょうか。スミレもいっしょに食べていいですよ

作中の説明にもある通り、普通、奉公人は別の部屋で食べたり、時間をずらして食べたりする。でも、児童小説においてスミレだけ一緒に食事ができない描写を入れるのは、子供たちが「スミレがかわいそうだ」と悲しむかも知れないと考え、いちおう「花守家だけ、奉公人に特別な扱いをしている」という設定にした。






<6話 花守家の朝>用語解説


〇麻布の鳥居坂

この物語に登場するメイデン友愛女学校のモデルとなった東洋英和女学校も、鳥居坂にあった。



〇東京では、江戸甘味噌という甘口の味噌が好んで食べられている

関東大震災の前までは、東京の人々の六割近くが江戸甘味噌を好み、東京人たちは東京府内でつくられた味噌ばかり食べていた。

だが、震災で東京の味噌が不足したことをきっかけに、長野の信州味噌や新潟の越後味噌など地方の味噌が東京に進出してきて、東京人たちにも親しまれるようになっていくのである。



〇桜子お嬢様の方言はとても可愛いですし

三重弁は可愛いやん? そう思わへん?(^ω^)



〇着物に袴という明治時代からの女学生の定番スタイルである

欧米文化が一般市民にまで浸透した大正時代においても、女性たちの外出スタイルは和服が多く、外では洋服を着ている男性ですら家の中では着物を着ていた。

関東大震災を経験して以降、日本の女性たちもだんだんと身動きがとりやすい洋服を着るようになって、セーラー服の女学生が増えていくことになる。

ちなみに、和装と洋装の女学生が混在している時期もあり、アニメ『大正野球娘。』はちょうどそんな時代の風俗を描いている。



〇半えりは今年の女の子たちの流行色である色鮮やかな赤紫の牡丹色

大正時代にも、その年ごとにファッションのための流行色があった。

大正9年(1920)は「サファイアブルー」「臙脂えんじ(黒みを帯びた赤色)」

大正10年(1921)は「納戸なんど色(緑色を帯びた深い青色)」「栗皮茶色(黒みがかった赤褐色)」

大正11年(1922)は「牡丹色」「藍鼠あいねず(藍色を帯びたネズミ色)」

といったように、その年によって色の流行はさまざまだった。

これは、着物に使う半えりや、雑貨などを売り出す百貨店が「今年の流行色は〇〇でございます」とお客たちに仕掛けて、その年の流行を作り出したようである。

流行が計画的に作られる、というのは今も昔も変わらないのかも知れない。

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