⒍秋
秋の空に夢想する。
彼岸花は、君自身だ。
真っ赤な花が君の顔で、茎は君の生っ白い首だ。
密集して咲いている花すべてが君なんだ。
「意味も無いが花を手折りたくなることってないか?」
僕は無心に折る。
ぱき、ぽき、と子気味のいい音をたてながら。
目の前に在る君を全て折っていく。
君は満開の笑みを浮かべている。
でも、君は僕の隣でうたた寝をしている。
だから僕は彼岸花の茎が折れる音を、知らない。
暖かな君の髪の毛に、そっと指を差し込んだ。
ナルシシズムと融合する365の短文 宮部宗介 @ryurokka3
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