第5話 10年前〜花火大会〜

夜中から降り続いた雨が、朝になってもパタパタと窓を打ちつける。


やっと待ちに待った花火大会の日だと言うのに、昨夜から中々の大雨だ。

真由美はインターネットの天気予報を何度もチェックしていた。

午後には雨が上がる予報になってはいたが、本当にこの大雨が止むのかどうか、不安でしょうがなかった。


「どうか雨、止んでください!!お願いします!」

柄にもなく、てるてる坊主まで作ってしまった。


〜♪

携帯に祐也からのメールが届いた。

『おはよう!まだ雨降ってるね(>_<)でも、昼から上がるみたいだし、きっと花火も大丈夫!』


うん、大丈夫だよね。真由美はメイクに取り掛かることにした。


天気予報通り、昼過ぎには分厚い雲の間から、カンカン照りの太陽が顔を見せはじめた。


母親に浴衣を着付けてもらい、待ち合わせの駅まで行く為バス停に向かう。

カラン、カランと履きなれない下駄を鳴らして歩く。

浴衣、かわいいって思ってもらえるかな。そんな事を思いながら歩いていると、バス停には居るはずがない裕也が待っていた。


「えっ!?なんで??駅で待ち合わせじゃなかった!?」

ビックリする真由美に、

「驚かせたくて、内緒で迎えに来た。着付けしてくれた友達が、ここまで車で送ってくれたんだ。」と言ってはにかんだ。


祐也もグレーのシンプルな浴衣姿だった。

色白で細身の祐也に、すごく似合っていた。

「ほんと、ビックリした〜。浴衣、似合うね。」

「マユも、浴衣めっちゃ可愛いよ。」

えへへ、とお互い照れ笑いする。


花火大会の会場へは早めに着いたが、ものすごく混雑していた。2人は自然な流れで手を繋いだ。


「ここで見ようか?」

空いているスペースを見つけて、2人は腰を下ろした。

まだ花火大会が始まるまで少し時間があったので、2人で音楽を聴くことにした。

1つのイヤホンを片耳ずつ、2人で聴いた。


MEGARYUの「夜空に咲く花」。あまりに歌詞が今の2人とピッタリで、なんだか泣きそうになった。


そうこうしているうちに辺りも暗くなり、花火大会が始まった。

間近で見るとすごい迫力で、花火の音が心臓に響く。

しばらく2人とも花火を見入っていた。


ギュッと、握っていた手に裕也が力を込める。


「・・・・大好きだから、ずっと一緒にいて。」

「うん。」

「俺と、付き合って。」

「・・・うん。」


シンプルな言葉だったが、言葉なんて必要ない程、お互いの気持ちは同じだった。

真由美は花火を見ながら、来年も、その先も、ずっと一緒に花火を観れますように。と祈った。

2人は肩を寄せ合い、夜空に咲く花をずっと見ていた。

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