第4話 10年前〜2度目のデート〜
『花火大会の日に告白するからーーー。』
祐也の言葉を思い出しては、頰が緩んでしまう。
祐也とはその後もスローペースで他愛もないメールを続けていた。
「でも、花火大会の日まであと1ヶ月か。」
真由美は1ヶ月待つのは長いなあ、と思っていた。
そんな時、祐也から
『花火大会までまだ1ヶ月あるし、よかったらまた会わない?』とメールがきた。
すぐに返信したかったが、祐也のペースに合わせて、しばらく時間を置いてから
『うん!会おう(^ ^)いつにしようか?』と返信した。
お互い夏休み前のテスト期間ということもあり、2度目のデートは祐也の自宅で一緒に勉強をすることになった。
「お邪魔します。」
祐也の部屋は主に学生の住むアパートの一室で、間取りは1Kと決して広くはなかったが、真由美の予想通りきちんと片付けられていた。
「狭い部屋だけど、どうぞ。」
お気に入りだというガラス細工が施されたグラスに、麦茶を入れてくれた。
2人きりのシーンとした部屋で、時折ノートに書き込むペンの音だけが響く。真由美は勉強に集中しようと思いつつも、目の前で同じようにペンを走らせる祐也が気になってしまう。
「ちょっと、休憩。」1時間ほど集中して勉強しただろうか。祐也がうーん、と伸びをする。
「進んだ?」と真由美が問うと、
「んー、まあまあかな。ちょっと分からないところもあるし、後は友達に聞いてみるよ。」と祐也は答えた。
結局勉強したのはこの1時間で、後はまた、話に夢中になった。まだまだ、お互いについて知りたいことが沢山あった。
夕方になり、そろそろ帰る時間かな、と真由美が思っていた頃。
「ね、横に座ってもいい?」
向かい合わせで座っていた祐也が、真由美の隣に移動した。
恥ずかしくって、顔を見合わせ照れ笑いをする。
お互いが好意を持っていることは、もう分かっている。
でも告白は花火大会の日に、と言われているのでまだ付き合っているわけではない。
そんな微妙な距離感がくすぐったい。
「・・・ぎゅってしていい?」
祐也の言葉に、真由美も頷く。
まるで壊れ物に触れるかのように、そっと祐也に抱きしめられた。
こんなに優しく触れられたことは、今まであっただろうか。
真由美もそっと祐也に腕を回し、抱きしめ返す。
言葉は交わさなかったが、ずっとこうしていたいと思うほど心地よい沈黙だった。
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