第6話 10年前〜1年の恋〜
晴れて花火大会の日から、祐也と付き合い始めた真由美。
大学やバイトの合間にデートをしたり、紹介してくれた亜紀を交えて大人数でカラオケしたり…と、とても楽しかった。
祐也の一人暮らしの家の合鍵ももらい、一緒にご飯を作って食べたり、両親には友達の家に行く、といって内緒でお泊まりをしたり。
「祐くん、大好きだよ?」
「俺も、真由美のこと大好き。」
周りの誰もが認めるくらい、ラブラブだった。
このままずっと一緒にいたいと、本気で思っていた。
夜、一緒に寝る時。
「幸せタイムだね」と言って2人でくっついて寝た。
映画のワンシーンをマネして、「祐くーーん!」と、祐也の腕の中に飛び込んで抱き合って笑った。
クリスマス、お正月、バレンタインデー…2人の思い出がどんどん増えていった。
しかし、付き合って行くうちにちょっとした不満も出てきた。
祐也はとにかくメール無精だった。
「ねぇ、なんでメールの返事くれないの?!」
真由美が怒ることもしょっちゅうだ。
初めはごめん、と謝っていた祐也だが、何度も言われるとさすがにカチンと来る。
「そんな、返事を急ぐ内容じゃないじゃん。毎回そうやって怒られると、疲れる。」
そうして喧嘩になる。
しばらく経つと、お互い言い過ぎてごめん、となるのだが、このことで何度も喧嘩になった。
また、祐也は女の子の友達も多い。
女子大の真由美には男友達がほとんどいないが、共学の祐也は男女大人数で遊ぶことも多かった。
「えー、女の子もいるのに、遊びに行くの?」
すぐに嫉妬する真由美を、祐也もはじめのうちは可愛いな、と思っていたが、だんだんと面倒臭くなってくる。
「別に真由美が心配するようなこと、何もないから。」
「でも、女の子も一緒なら嫌だもん!」
「そんなに束縛されたくない!」
付き合う期間が長くなるにつれ、些細なことで喧嘩が増えた。
「もう、別れる!」
そうやって、真由美はすぐに泣いた。
もちろん別れる気なんてなかった。祐也なら絶対に引き止めてくれると、分かっていたから。
でも、何度もそんな喧嘩をするうちに、祐也にも限界がきた。
「じゃあもう、別れよう。このままじゃれ俺たち、ダメになる。」
真由美も素直になれず、
「うん、そうしよう。もう、別れよう。」
と言った。
絶対に手放してはいけなかったのに、お互いプライドが邪魔してゴメンが言えなかった。
あんなに大好きだったのに、こんな些細な喧嘩で別れてしまったのだ。
付き合ってからたった1年の恋だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます