世界で一番早い新年!(前編)
挙式後の俺は働きづめだった。10月と11月は、月に1度しか休めなかった。それは麻衣も同じだった。毎日のようにドラマやCMの撮影がある他、最近はテレビのバラエティ番組によく出演するようになった。そして12月は年末年始まで休みがない。なぜなら、年末年始は俺も麻衣も休みを長く取らなければならないからだ。
そして12月末、俺と麻衣は新婚旅行のため南太平洋のキリバス共和国に行った。
日本からキリバスは直行便がないため、ホノルル経由で行くことになった。そして成田空港を飛び立つこと11時間、ホノルルでの待ち時間を含めると13時間かけて、目的地のキリスィマスィ島に到着した。
キリスィマスィ島。この島はキリバス共和国最東部のライン諸島にあり、一面珊瑚礁でできている。珊瑚礁の島としては最大級の、388平方キロメートルという面積を持つ島だ。名前の由来はイギリスのジェームス・クックが1777年12月25日、クリスマスの日にこの島に到達したことによるものだ。
そしてこのキリスィマスィ島を含むライン諸島一帯は地球上で最も早く新しい1日が始まる時間帯「UTC+14(ロンドン基準で14時間早く進んでいる)」を採用している。そう、このキリスィマスィ島は世界で一番早く新年を迎えるのだ。
島に着いたのは午後だった。ちなみにこの島は日本より5時間早く進んでいる。そのため、日本だとまだ午前中だ。そして俺と麻衣は飛行機と年越しの関係で2週間、この島に滞在することになった。
とはいえ、今日は12月25日。クリスマスの日だ。前日はクリスマスイブで飛行機に乗る前に、成田空港のレストランでこの日限定のクリスマスディナーを食べた。そして、今年はまだ1週間ある。俺と麻衣は一体何をするべきだろうか。どうやらダイビングとバードウォッチングがこの島の観光だが、2週間も同じことをやるとさすがに飽きる。そして、天日干しで作られる塩がこの島の名産品だそうだ。
結局この日は空港に着くとすぐ、ホテルに向かった。そして夕食を取り、その後は伝統音楽と伝統舞踊を鑑賞し部屋に入った。
2日目、この日は朝食を済ませた後、観光に関する説明があった。そしてその日は丸一日島をいろいろ廻った。
3日目、この日は島民の生活を見学・体験した。まずは島の特産品であるヤシの樹液の採集作業を見学し、ココナッツの生産行程も見学した。そして、ヤシやバンダナスの葉で編むマット・帽子・かごなどの作り方を見学し、製作もした。そして午後になると、キリバスの伝統舞踊や歌を教わり、木から火を起こす方法も教わった。しかし、「木から火を起こす」という作業は意外と難しい。麻衣も、「なかなか火が出んな~」と言っていた。お互いわずかに火が出た時は興奮したけど。
4日目、この日は朝から船に乗り、海でイルカやマンタの鑑賞をした。海が綺麗だ。そして午後は港の近くでシュノーケリングと釣りを体験した。シュノーケリングは始めての体験だったけど、海の中に潜る経験ができてよかった。
5日目、この日は日曜日であったため、午前中は教会で礼拝を行った。この日は今年最後の日曜日ということもあって、特別礼拝だそうだ。日本人の俺達には関係ないが。そして午後からは自由行動。俺と麻衣は近所の港で釣りへ行った。昨日とは違って2人ともかなり釣れた。そして、夕方にはホテルに戻った。
6日目、この日は朝からビーチに向かった。俺と麻衣はやっと水着に着替えられる。俺と麻衣は早速、海へ泳ぎに行った。この島は一年中夏で泳げると現地の人が言っていた。
「ちょっと、何見てんの。恥ずかしいやないか・・・」
俺は水着姿の麻衣を見ると、そう言われた。芸能界に復帰してからの麻衣はツバキガールズ時代と違って、なかなか水着を着る機会がなかった。だから麻衣の水着姿も久しぶりに見る気がする。そして、
「もう夫婦なんだから気にするなよ」
と俺は麻衣に言った。すると、
「そうやね・・・」
と言った。
7日目、この日は12月31日だ。この日は夕方まで自由行動だ。俺と麻衣は再びビーチに向かう。2日連続で麻衣の水着姿を見ることができた。しかしこの日はあまり泳ぎに行かず、砂浜で寝転ぶか、2人で色々話していた。その日の午後、
「今年ももうすぐ終わるんやね・・・」
と麻衣は呟いた。そして俺は、
「そうだな。そしてここで俺たちは世界で一番早い新年を迎える」
と呟く。そして、
「麻衣、子供は何人欲しい?」
と俺は麻衣に話しかける。すると、
「少子化少子化と騒がれてるから、10人くらいは欲しいかな・・・どんなに頑張っても3人が限界やと思うけどな」
と麻衣は言った。
そして夕方になり、ホテルに戻る。ホテルではこれから新年を祝うパーティーが行われる。夕食を済ませると一旦部屋に戻ったが、夜11時半に再びホテルの食堂に向かった。そしてホテルのスタッフ・宿泊客揃って外に出る。
そして1月1日午前12時、その瞬間に海の方から花火が放たれた。そう、このキリスィマスィ島は世界で一番早い新年を迎えた。
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