結婚式

俺と麻衣が籍を入れ、晴れて夫婦になった翌日、


「大久保麻衣が結婚。ブログで発表」


というニュースが早速流れた。ちなみにブログが投稿されたのは今日の深夜12時ちょうどだ。


そしてその日の夜、仕事を終えたばかりの俺はツバキガールズ1期生を居酒屋に呼び出した。1期生でまだツバキガールズにいるメンバーはもう安達と松永しかいない。それでも大半のメンバーが芸能活動を続けている。そして凛ちゃんはこの春大学を卒業。某民放局でアナウンサーとなり、花音ちゃんも来年から俺と同じ芸能事務所のマネージャーになることが内定している。


そして当日深夜まで仕事だった麻衣に黙り、結婚することを伝えた。


「優くん、おめでとう。次は私の番だからね」


と沙織さんは言い、


「優くん、おめでとう!私はいつ幸せが訪れるのかな・・・」


と安達は言った。そして現・ツバキガールズリーダーの松永は、


「優っち、おめでとう!私もいつかは結婚するから・・・」


と言った。




◇ ◇ ◇




10月のある大安の土曜日、都内のある教会で俺と麻衣の結婚式が行われた。俺はまず新郎の更衣室に向かい、正装に着替える。着替えが終わると隣にある新郎の控室に移り、麻衣を待つ。控室にはなぜか沙織さんがいた。そして、しばらくするとウェディングドレス姿の麻衣が現れた。


「優、どう?」


麻衣は俺に言う。俺は、


「綺麗だよ・・・」


と言った。そして、


「麻衣は元がいいから何を着ても似合うわね」


と沙織さんは言った。そして、麻衣はお義父さんから、


「麻衣、何をやってるんや。早よ戻るで」


と言われ、去った。そして沙織さんは、


「じゃあ私、これから式が始まるし会場に行くわ。2人の姿、楽しみにしてる」


と言い去った。どうやらもう会場は開いているようだ。




そして式が始まる。司会は俺がマネージャーとして担当している若手声優だ。まず、進行の説明と関係者方々の挨拶があった。その間、俺と麻衣はお互いの親に付き添われ、会場の入口前で待機する。そして親は2人より先に会場に入った。その後、扉が開かれた。2人はお互い手を繋ぎ、表に向かう。




「麻衣さん、綺麗ですね!」


「相川ー!お前すげぇ美人貰ったな!」




2人にかかったのは大量の拍手と歓声、そして写真撮影のフラッシュだった。そして2人が表に上がると、ようやく収まった。そして、お互いの両親・親族・そして関係者方々が壇上でお祝いのメッセージを述べる。そして、神父さんから立つようにと促された。そのため、2人は群衆に背を向けた。これから「誓い」をすることになっているからだ。


「新郎さん、あなたはこの女性を愛し、病める時も、健やかなる時も、貧しい時も、尽くしますことを誓いますか?」


神父さんが俺に問いかける。


「はい、誓います」


俺は力強い言葉でそう言った。こんなこと、問いかけられなくたって分かっている。


「新婦さん、あなたはこの男性を愛し、病める時も、健やかなる時も、貧しい時も、尽くしますことを誓いますか?」


「はい、誓います」


麻衣にも同じような問いかけをする。


「病める時も、健やかなる時も、貧しい時も、死が2人を分かつまで、永遠の愛を誓いましょう」


『はい』


「では、こちらの指輪を、お2人に授けます」


『はい』


事前に預けていた婚約指輪が元に戻り、これで正式に結婚指輪となった。


「それでは、新郎新婦は誓いのキスを」


『はい』


神父さんに促され、2人は肩を寄せ合って近寄っていく。そして、俺と麻衣の唇はお互いに触れ合う。リハーサルでは、「キスをする」だけで終わっていたけど、無意識に長いキスになってしまった。多分、本来の想定なら軽いキスだと思うんだけど、俺たちにはそんなことはもう、どうでもよかった。キスは何度もしたけど、ここまで長いキスは始めてだろう。結婚式になると特別だ。外のことなんてもう何も見えなかった。


「えーっと、ありがとうございました・・・」


神父さんの声で2人は我に返った。




「アツアツですね・・・あの2人」


「とんでもないもの、見ちまったぞ・・・」


「しかし、暗くてよく見えないな・・・」




よく見ると会場ではひそひそ話をしていて、俺のかつての野球部の同級生や先輩・後輩、そして会社の同僚や先輩と思われる男の人達が2人のキスについて話していた。


「それでは、誓いの儀式を終了いたします」


神父さんはそう締めの言葉を放った。




式が終わり、みんなが教会の入口の前に集まった。そして2人は遅れること教会から出て、麻衣はブーケを投げる。ブーケは沙織さんが受け取った。そして記念撮影。来場者が大勢のため2回に分けて行った。そして、これから披露宴があるため、近くのホテルに移動した。




そしてホテルに入る。披露宴のために用意された部屋は2階の大宴会場だった。広すぎるため普段は複数の部屋に分けて色々行うらしいが、今日は人数が多いためすべての部屋を使うことになった。


「さあ、料理の方も冷めないうちに食べましょう。えー、それではですね、皆さん、グラスを持ってください」


結婚式に引き続き、司会は俺がマネージャーとして担当している若手声優だ。そしてその司会者の指示とともに、俺たちは来場者のグラスに白ワインを、そして未成年者にはアップルジュースを注いだ。


「それでは、優さんと麻衣さんのご成婚を祝しまして、乾杯!」


『乾杯!!!!!』


割れんばかりの乾杯の声と共に、あちこちでグラスが叩かれる音がする。


俺たちも席に座り、料理を食べることにした。


「・・・うん、美味いな」


高級ホテルで作る料理ということもあって、かなり美味しい。


「これ、いけるな。めっちゃ美味いわ」


麻衣も美味しそうに頬張っていた。そして参加者の何人かは食べながら、あるいは食べ終わりつつ周囲の人と雑談を始めている。そしてここからは、結婚披露宴でのメインイベントに移っていく。そのメインイベントは両親から2人へ、2人から両親へのメッセージとケーキ入刀。そして、2人のドキュメンタリー動画だ。




そして披露宴が終わり、各自解散となった。俺も麻衣も私服に着替える。夜からはお互いの友人を集めて、居酒屋で二次会がある。そして来週には麻衣の地元、大阪で三次会だ。そして年末には、新婚旅行が控えている。俺と麻衣は、この新婚旅行のことで頭がいっぱいだった。

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