他の異能

 今までは極めし者についての説明でしたが、ここでは「気」の力を使った他の異能について軽く触れておきます。


 極めし者は、体の内の「気」を「闘気とうき」として操り、運動能力において常人をしのぐ力を持つ者ですが、「気」を他のさまざまな力に利用できる者達もいます。

 「摩天楼の翳」作中で「魔術師」と呼ばれている者です。


 魔術師、と言ってもファンタジー世界のような、呪文を唱えて攻撃魔法や治癒魔法などを発動するというのではありません。

 体内にめぐる「気」を、闘気ではなくほかの力に使うことを「魔術」と呼んでいます。

 なので、「気」を利用して異能を発揮する者が「魔術師」と呼ばれているのです。

 さらに魔術師は、ただ異能を行使するだけでなく己の掲げる理想、理念を追求する者、だそうです。


 魔術には様々なものがあります。

 先に言ったように、魔術師は理念を追及しているので、たとえば「不治の病の根絶」を目指す者は「どのような病も治してしまう薬物」を作ることを研究し、従来の薬品に「気の力」=「魔術」を加えて効力を高めたりできるようになっていくのです。

 魔術師の目指すものの数だけ魔術がある、と言えますね。


 極めし者は、気を利用して運動能力を特化させた魔術師、と呼べなくもないのですが、魔術師達は極めし者を「気の力を闘いにしか利用できない、ただ闘うだけの半端者」としてさげすんでいるらしいです。

 どちらが先に世に現れたのかは判りませんが、極めし者と魔術師はあまり仲が良くない、ということになりますね。


 魔術師の他にも自らを「除霊師」「退魔師」と名乗る者もいます。

 彼らは主に、人に害をなす「人ならざる者」の排除に努めています。

 極めし者の闘気に似た力を、物の怪や悪霊と戦える「霊気」「霊力」として扱っているようです。


 異能者全体の中での割合は、ほとんどが極めし者で、退魔師や魔術師はかなり少ないそうです。

 極めし者に表立った組織はありませんが、刑法などで規律が定められているのは「世界観設定」で触れたとおりです。

 対し、魔術師達は「魔術師協会」を作って結束しているとか。

 規律や組織から外れた異端者が犯罪に関わっていることも多いのは、どこの世界も同じです。


 極めし者はようやく世間での認知が広がってきたと言った段階ですが、他の異能者達、特に魔術師は、世に知られることを嫌っています。

 異能に対する恐怖からの偏見や迫害を恐れているのももちろんですが、魔術師は自分の研究を横取りされたくないという考えもあるそうです。

 なのでまだまだ、知られていない力を発揮する異能者がひっそりと活躍、暗躍しているかもしれませんね。

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