第12話 怪談ルポ『新耳袋殴り込み 第一夜』(ギンティ小林氏著、角川ホラー文庫)レビュー

 いい歳した大人たちの肝試しエッセイ。



 この本のレビューをする前に、まず『新耳袋』について説明しないといけません。

 『新耳袋』(全10巻)とは、実話怪談蒐集した本で、1巻99話の短編からなる怪談集です。

 実話なのでオチのない物や得体の知れない物、不思議だけど怖くはない話も掲載されています。

 この「殴り込み」は、その怪談の現場に実際に行って取材をしたルポルタージュです。

 もっとも、『新耳袋』では場所は明かされておらず、行くことは勧めていないそうですが……。


 さて、本題に入ります。

 怪談で語られた場所に実際に行くという「肝試し」形式のこの本。さぞおどろおどろしい内容かと思われた方も居られると思います。

 しかし、全然そうではありません。むしろ明るい内容です。

 元気なメンバーたちで大人の肝試し、微妙に計画性のないアクシデントだらけの珍肝試し道中……と言った感じです。

 しかも、メンバーに怖がりな人も入れる用意周到さ。でも一人だけなので逆に浮いているという微妙さです。

 極め付きは有名な幽霊マンションの前でスパイダーマンの格好で写真撮影。しかも深夜。どう見ても不審者にしか見えません。


 一応書いておきますが、本人たちは真面目にしているようです。

 だが、その大真面目で馬鹿なことをする姿勢が笑えます。

 普通に取材したり、怪奇現象が起きたりする描写もあるにはありますが……。

 今更ですが、これを「ホラー文庫」で出しちゃう出版社って大丈夫でしょうか? ……まあいいか、面白いし。

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