第2話 7月12日。創作は人生の美酒であり肴です
ちょっと夜更かししてしまった。バイオリズムが下がる。
というのも、創作活動を応援するサイトでの『絵を正確に描く』練習法というのが気になってつい夢中になってスマートフォンを覗き込んでいたからだ。
僕は、技術のみを追求する絵の描き方や精神は良いとは思わない。
創作活動とは、何より楽しんでやり続けるだけのことで、技術は後からその『楽しみ』の副産物として付いてくるものだと思っているからだ。
だが。
何も無い状態からでは『楽しみ』切れないことを、僕は知っている。
絵と言わず文章作品でも『楽しみ』切れずに保留にしてしまっている事実が物語っている。
バレーボール漫画のヒット作『ハイキュー!!』にも、こう書いてある。
『何かを楽しむ為には強さ(技術)が要る』
気の向くままに創作活動をして、結果に全くこだわらずそれを良しと出来る人は、きっと幸せなのだろう。
だが、僕は上手くもなりたい。
楽しもうとする姿勢や心構えは依然、必要だし、より楽しめるように、と。
そういう基本スタンスを踏まえた上で……創作活動の充実を図りたい。
より楽しく……絵を描いたり、ゲームを作ったり、小説を書いたり。自由で、ほど良く孤独で、静かなひと時。
それさえ出来たなら、無理にアートな世界で仕事を得て食っていく必要は無いと思う。
そう書けば「それ見たことか、また詭弁だよ」と言う人も多いかもしれないが、僕はそのスタンスでひとまず満足だ。
もちろん、好きな創作活動で生活費を稼げるなら一見極楽のようかもしれない。
だが、プロの世界は想像以上に苛烈で、険しい生き方だ。真に創作を愛している実力者でもコンスタントに仕事をこなしたり、健康を維持するのは至難の
心が死に、肉体が朽ちて『夢の墓場のしかばね』と消えゆく人の何と多いことか。
超個性派の演技で知られる声優の若本規夫さんもかつて、御自身のラジオでこう述べる。
「憧れと言うのは虹のような世界だ。何が何でも作家になりたいと努力に努力に重ね……一家を犠牲にして書いても書いても売れない……苦労した挙句、人生を台無しにしてしまう。本人も辛いが、それを見守る周囲も辛い。ところが、片方じゃあ、鼻歌交じりで書いたような本が飛ぶように売れるんだ。すぐに憧れが本来の美しい色彩でなくなって……残酷な世界の色彩に反転してしまう。そんな現実もザラにある」
この台本を聴いた当時、僕は漠然と職業作家や声優に憧れていたが、初めて少しでも現実を生きようと思えた。
アートな世界で生きるとは、少なくともそういうこと。とてつもない覚悟を持って、人生を棒に振りかねない危険と隣り合わせ。
だからせめて、僕は自分の創作活動を楽しみたい。
その世界で食っていけるかなどは、先にも述べた通り、熱心に、楽しみに生きた結果の副産物。結果論に過ぎないと思う。僕の友人もハッキリ言って赤貧の暮らしだが、愛する人と共に生き、創作活動を人生の美酒にして生きている人がいる。
僕もご多分にもれずアートを一生の飯の種にしようと何度となく思った人間だが、自分のペースで創作活動に情熱を注ぎつつ、静けさを肴にして生きることも悪くないと思えそうだ。
月末、関西で創作活動をする人同士のオフ会に行ってみる。
恐らく、趣味の延長としての創作活動の楽しさを追求する、そんな人が集まるはず。
仲間が増えるといいな……。
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