間幕 母からの手紙

『可愛い可愛い私のハツキへ』


ハツキ久しぶりね。


ちゃんと元気にしていますか?


美味しいご飯作ってくれる彼女は出来たかな?


お父さんと仲良くやっていますか?


お父さんなかなか頑固だから大変でしょ?


でもね、私はそんなお父さんと結婚して


ハツキが生まれてくれて本当に幸せな人生だったのよ。


ハツキが生まれた時に、お父さんと2人で命に代えても


守ろうって約束したの。


ちゃんと約束は守れたのかな?


この日記をちゃんとハツキに読んでもらえてるのかな?


ハツキが読んでくれているのならハツキを守れたのよね?


それだったら私は安心して天国に行けてるのかな?


そんなわからない話をしても仕方ないね。


ここからはわかる話をするからね。


もしかするとお父さんが話してるかもしれないけど


お父さんの事だから話してない気もするし。


私はお父さんと結婚する前まで神に仕える一族。


「アイネ一族」


の娘として生まれ、アイネの村に居たの。


生まれつき回復能力と自己回復する能力が高くて


回復系ヒーラーとして怪我をした人や病気の人を治してきた。


ある日、傷だらけの男の人が村にやって来たの。


そしてこう言ったの。


「近くに魔物の集落があった。倒してきてやったから俺を治せ!!」


ってね。最初はなんて横暴で勝手な人が来たのかしらと思ったわ。


でもねその男の人は1年くらい村に居て魔物退治をしてくれたの。


私の村は強い魔物と戦える男の人が少なかったからね。


その男の人は戦いに行く度に傷だらけ。


だから私もその男の人の戦いに付いて行って、回復して魔物を倒してを何回も繰り返していくうちに、


その人の強さや優しさに惹かれていった。


もうわかるわよね?その人が


ハル=サンブライト


お父さんね。


いつもいつも傷だらけになって、ボロボロになって、見ていられなくなって


お母さん願ったの。


「どうかハルさんが傷を負いません様に」って。


それで発動した能力が


移動する・苦痛ペイン・ムーヴ


代償としてウロボロスって言う黒い蛇が付いて来ちゃったけど。


でもどうやら私の自己回復と代償の相互干渉が合っていたみたいで


侵食がだいぶ遅くなるみたいだった。


そこからお父さんは魔物をどんどん退治していって村の周りは平和になったの。


そして村が魔物から襲われる危機が無くなった。


お父さんは自分の村に帰る事になって、帰る前日にね


「これからも一緒に居よう」


ってプロポーズしてきたからそのまま私も付いて行っちゃった。


そうしてハツキが生まれた。


お父さんはハツキを立派なトレジャーハンターにする為に、


たくさん、たくさん自分の技と知恵を教えてたね。


上手に出来ないと「お母さ~ん」っていつも泣きついてきてた。


上手に出来た時は「お母さん、ボク上手く出来たよ」って笑ってたわね。


本当は私の回復能力も教えたかった。


でも教えたらきっと無茶な戦い方をしてしまうと思って教えていなかったの。


もしこれを読んでいるハツキが回復能力を必要としているのなら、


きっと私は後悔する。


なのでこの秘密の日記シークレット・ダイアリーで継承するね。


ハツキ、あなたにも回復系ヒーラー


アイナ一族の血が流れています。


信仰が薄くなっても神に仕えて来ました。


この日記の魔法を解除出来たのならハツキも成長したのですね。


お父さんはまったく才能が無いから渡せなかったけど、ハツキなら大丈夫よね。


だってハツキは私とお父さんの子供だもんね。


だからハツキにあげます。


この力でハツキが大事に想う人を護れますように。


継承します。


アイナ一族の血が途切れぬよう。


サンブライトの血と、アイナ一族の血が流れる、


私達の大事なハツキへ。


自動・自己回復オートマティーク・ヒール


ハツキに神のご加護を。


これでハツキにも私の力が受継がれたはずよ。


最初は自己回復しか出来ないと思うけど、


大事な人を護りたいと想う気持ちがあれば、


自分以外の回復も出来るようになるから。


頑張って大事な人を護ってあげてね。


最後にこれだけは忘れないでね。


私もお父さんもずっとずっと見守っているから。


大好きな大好きなハツキを見守っているから。


愛してるわ。ハツキ


                         フェーリア=サンブライト


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る