受継がれる者
第26話 ガーディアンの塔
倒れた後、リーネの回復魔法で怪我を治してもらい無事に復活したボク。
リーネもリーネで
キューブの中に入り眠ってしまったようだ。
ヒジリだけが元気なまま朝を迎えた。
「おっはよ~~~!!!」
元気を次の日も持ち越したままのようだった。
ドスンとボクのベッドに飛ぶ込み。
ぐえ~~!!と変な声と共に目が覚めた。
「ハツキ、朝だよ!今日は天気イイよ~♪
リーネはちゃんと自分で起きて朝ご飯食べてるから、
ハツキも起きてご飯食べて早く出発しようよ~」
天気はイイかも知れないけれど目覚めは最悪だ。
朝食と旅立ちの準備を終えたヒジリはニコニコと笑顔を向ける。
リビングに行くとリーネがパンを頬張っている。
「おはよう。調子はどうだ?
私の回復魔法は効くだろう?フェーリアにも負けなかったんだぞ!」
フェーリア...
お母さんか。
リーネはちゃんと母の事も覚えていてくれてるんだと思いながら、
ヒジリが作ってくれた朝食を取る。
それを見ていたヒジリがニコニコしていた。
いや、先ほどからずっとニコニコだ。
何か気付かない?と言う顔をしながら。
うん。
やはり言うべきなのかな?
「ヒジリ?髪型変えた?」
「うん♪やっと言ってくれた~!!でも遅い~。
そして髪型だけじゃなくて服もなんだけどね」
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ヒジリの小さな顔の横には、
綺麗なしっかり手入れのしてある銀髪が編み込んであり、
黒の
なぜか露出が多くなっていた。
「リーネにちょっと改良してもらったの♪
少し露出が多くなっちゃったケド...。
カワイイ~??」
確かにカワイイ。
露出が多くなった分、ヒジリを見るのが恥ずかしくなったけど。
「う、うん。カワイイよ」
素直に感想を伝えた。
ヒジリは嬉しそうにスキップをしながら台所に向かい洗い物をし始めた。
「どうだ?私のセンスは?布の面積を少なくする必要は無かったが、
敢えて少なくした!
ハツキへのサービスだ♪」
今度はリーネがニコニコしながら近付いてきた。
リーネ。
お前。。。
「ありがとうございます♪リーネ様♪」
深々とお辞儀をし感謝の気持ちを示す。
洗い物も終わり、準備をし終えた全員は今度こそ出発だ!
と気持ちを新たに外へ出た。
昨日とは違いとても天気が良い。
「ん~~~キモチイイ♪」
ヒジリが背伸びをしながら、いつも通り遠足にでも行くかの様に言った。
今日こそ新たなる旅の始まりだ!!!
目指すはリーネの街から東にある
「ガーディアンの塔」
そこでボクは
ヒジリを...
リーネを...
護る力を手に入れる!!!
ガーディアンの塔までの道のりはそう遠くはない。
何事も無く行けば大体2~3日の距離だ。
「ヒジリ、今度は妖精を見つけても追いかけるなよ~」
キチンと言っておかないとまた時間を食いそうなので注意しておく。
ヒジリはそっぽを向きながら口を尖らせ小さな声で
「は~い...」とだけ言っていた。
それを見てリーネが楽しそうに笑う。
やはり仲間が増えるのはいいな。
ガーディアンの塔に向かうまで何事も無く、無事に着いた。
と言えたら良かったのに...
注意したのにも関わらずヒジリは何度か妖精を追いかけ罠に掛かる。
ボクが
体力を消耗して、休むって事が続いた。
初めの内はリーネも「ホントにひっかかるんだな!」なんて笑っていたが、
最後の方はもう完全に呆れていた。
「「ヒジリ、お前な・・・」」
リーネと声を合わせてヒジリに言った。
「わ、わかってるわよ!
でもカワイんだから仕方ないじゃない!
逆になんで追いかけないのかあたしは不思議なんだけど!」
ヒジリは完全に逆ギレして文句を言う。
はぁ~。とリーネと共に溜息をつきガーディアンの塔を見上げた。
頂上は雲の上までありまったく見えない。
上る前から考えたくも無いが、
頂上に行くまで何日掛かるのだろう...
回復アイテム、宿泊アイテムは足りるのだろうか?
色々な不安が頭を過ぎる。
そして一番の心配はどんな試練なのだろうか?
人それぞれ試練が違うとリーネは言っていた。
ボクに出来るのだろうか?
ここでボクが試練に失敗し、証の継承が出来なかったらどうなってしまうのだろうか?
塔を見上げたまま、唾をゴクリと飲んだ。
次の瞬間、背中を押され前のめりになる。
「なにもやらないうちから悩んでいるの?
もし、失敗してもまた挑戦すればいいじゃん!
それに何かあったらあたしが護るし。
ハツキはただ何も考えず前に進めばいいよ♪」
後ろに居るヒジリから優しく天使を思わせる声が聞えて来る。
確かにそうだ。
何も考えずってのは少しダメだと思うけど。
やる前から悩んでいても仕方が無い。
失敗したらまた挑戦すればいい。
何回でも。
多分、挑戦できるよね?
なんてまた悩みそうになったので首を振り、塔の頂上を見据える。
小さく頷き、
「よし!出たとこ勝負!!みんなヨロシク~」
ヒジリもリーネも頷き、いつも通り手を重ね、お~!!と叫んだ。
ギギと音を立て重い扉を開く。
何も無いフロア。
奥には上層階に上がる階段が見える。
「何も無い」
ヒジリが見たままの感想を口に出す。
確かに何も無い。
不自然な位に何も無かった。
「
きっと頂上には証を継承するには番人もしくはボスがいるだろうから、
力を温存しておきたかったが仕方が無い。
最初から罠にひっかかって失敗だけはしたくなかった。
・・・ このフロアにトラップは存在しません ・・・
・・・ 終了致します ・・・
「え!?」
「どうしたのハツキ?ヤバい?」
「いや・・・何も無い。上に行こう」
完全に肩透かしを食らった。
まぁこのまま頂上まで行ければ最高なのにな。
なんて思いながら、階段を上る。
次の階も次の階も次の階も何も無い。
「ね、ねえ?なんかこの塔変じゃない?
なにも無さ過ぎじゃない?」
ヒジリが、みんな思ってる事を口に出す。
確かにそうなのだった。
不思議なくらい何も無い。
「何も無いに越したことはないだろう?
私たちは上るしかないのだぞ」
リーネがもっともな事を口にし、
階段に足を掛け、後ろを振り向きながら楽しそうに
「次の階には居るぞ!楽しみだな!」
自然に体に力が入る。
ヒジリも同じように真剣な顔になっていた。
~ ガーディアンの塔 5F ~
さっきと同じフロア。
なにも無かったフロア。
今、目の前に居るのは鋭く光る曲刀と体半分が隠れる大盾を持った、
皮膚も肉も無い顔と体。
体中からカタカタと音を出している。
「待っていたぞ。証を継承する者達よ。
我は不死の騎士である。
汝の力の全てを持って討ちほろ...」
「我が名はリーネ。
叡智を統べ、司る者なり。
火竜・ボルケイノス」
喋り終える前に灰になった。
「話が長い!!!手短に話せ!!」
リーネが怒りながら指をパチンと鳴らす。
ヒジリと2人で呆然と立ち尽くしていた。
この子も怖い。
「ん?どうした?2人とも?
先に進むぞ!」
「いやいやいや!喋ってたよね今?
なにか情報あったかも知れないよね?」
「無いだろう?だって討ち滅ぼしてみろ!って言うだけだったんではないのか?」
リーネが首を傾げ、答えた。
うん。もういいや。先に進もう。
次の階も何も無かった。
きっとこの塔は何階かに番人らしいモンスターが居て、
そのモンスターを倒して、頂上を目指すのだと誰もが思った。
さっき居たのが5階。
5階間隔にいるのだろう。
~ ガーディアンの塔 10F ~
やはり居た。
5階間隔で番人が居るみたいだ。
フロアの中心に立っている。
頭が天井にぶつかるくらいの大きさだった。
今回は話を聞いておこうかと思った瞬間、
「
後ろからピシっと床が割れる音と共に、
ボクの横を風が通り過ぎる。
ドゴーンと壁にぶつかる音。
フロア中に立ち込める砂埃。
動かない人形に変わり果て、サラサラと体が崩れていた。
「フフフ♪蹴り一発でしたぁ~♪
リーネには負けられないよ!!」
ヒジリは勝ち誇った顔で
腕を組んで立っている。
もうなにも言わない。
この子達怖い。
「なんだ!こんなモノか?修行にもならないな!もうめんどくさい飛ぶぞ!!」
リーネが詠唱を始めた。
なにそれ?めんどくさいって何?
飛べるの?行けるの?チートなの?
そんな事を考えてると詠唱が終わり体が宙に浮いた。
「
そう言うと周りの景色が一瞬で変わり、
さっきまでのフロアとは違う感じの場所に着いていた。
「ここが頂上だな」
リーネが満足そうに見渡す。
「もうあなた達はなんでもアリなの?
番人の話も聞かないし、何もさせないで倒しちゃうし。
挙句の果て、フロアぶっ飛ばして頂上に来ちゃうし!」
言ってしまった。
いや、言うしかなかったのだ。
なぜなら...
フロアの奥にある玉座で鬼が”鬼の形相”でこちらを睨んでいるからだ。
「「 だって~ 」」
ヒジリとリーネが口を揃えて言う。
「わはは!よく来たなサンブライトの子孫よ。
我輩は
証の継承者を見定める者。
先に言っておく。
証の継承にはルールがある。
それを破った時点で失敗と見なす」
怒っているのかと思っていたがそんな事は無かったらしい。
きっと生まれつき?そう言う顔なんだと思い込む事にした。
そして今回はさすがにヒジリもリーネも攻撃する気配は無かった。
少し安心しながら聞いてみる。
「そのルールってのは?」
「わはは!そんなに難しい事では無い」
鬼は玉座から立ち上がりフロアの中心に向かい歩き始め、
中心に立つと両手を広げこう言った。
「ルールは少し多いがな。
1つ、我輩に触れる、もしくは攻撃できるのはサンブライトの子孫のみ。
1つ、我輩も攻撃するがその場合はここに居る、女子2人も含まれる。
1つ、女子2人に傷を負わせてはならない。
1つ、全員、皮袋に入っているアイテムを使ってはならない。
1つ、サンブライトの子孫は能力を使ってはならない。
そして、おぬし等の勝利条件は我輩を後ろの壁まで押し返すこと」
簡単じゃろ?と楽しそうに鬼が笑う。
壁まで押す?
目の前に居る鬼はさっき居た
ボクの力だけで押せそうにもないぞ。
アイテムも使えない?
ヒジリの力も、リーネの魔法も使えない?
強化さえ使えたら...
そして鬼にヒジリとリーネが攻撃されて当たったら失敗?
どうしたものか?と頭を最大限に稼動させる。
常に冷静でいろ。か...
「すみません。質問してもいいですか?」
「なんだ?言ってみろ。サンブライトの子孫よ」
「そこに居る女の子はあなたに攻撃さえしなければ能力を使ってもいいんですか?
あなたの攻撃を避けるのに使ったりとか?」
「うむ。それは良い事にしよう。
能力と魔法で我輩に攻撃、そしてお主に強化魔法され使わなければ合格じゃ」
ちっ!
先に強化魔法で押し込む作戦が潰された。
「さて質問は終わりか?
そろそろ始めるぞ」
この作戦だけは本当に使いたくなかった。
しかしやむを得ない。
ボクはフロアの中心に進み、振り返らずリーネに伝える。
「すまん。頼んだ」
たぶんリーネは分かってくれるはずだ。
そうでないとマズい。
中心近くになり、深呼吸を一つし同じく背を向けたまま一言。
「あのさ。ヒジリ?」
後ろから、ん?と言う声が聞こえた。
全身の力を抜き、
「ヒジリ?その
ヒジリのお胸だとちょっとアレじゃない?
キューブくらいだったr...」
「
小さく震える声でヒジリが呟くのが聞こえた。
後ろを振り返らずともわかる。
ヒジリの怒りがMAXだと言う事を。
今度は後ろでピシっと床が割れる音がした。
さっきの
しかし今回は風が横を通り過ぎない。
ボキッと音の後、
鬼にぶつかりそのまま鬼と一緒に壁にぶつかる。
「ボ、ボクの勝ちだ...」
言うまでもなくそのまま鬼の胸の中で意識が無くなった。
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