第40話 零
「……喩?」
「全部、分かったんだ」
涙の【精神感応】によって繋がった時に流れ込んできた記憶。そこにとある少女がいた。
三年前、つまり成長期真っ盛りの頃の記憶だというのに、その少女は今と何も変わっていなかった。
成長期、男子も女子もたった一年ですら、確実に大きく変わってしまうそんな時期なはずなのにその少女はまるで変わっていなかった。
「涙は唆されたんだよね。今の涙には僕を救い出す力はない、だから僕を涙の元から開放すべきだ。その為に僕を傷付けろって、そう言われたんだよね」
「……うん」
持っていたスマートフォンが通知を知らせる。
「そう、言われたんだよね。――桃洞零、って人に」
「……うん」
「そう。……ありがとう、涙。…………。……また、会おうね」
少しの躊躇をして、喩は涙との再会を願った。それがまた、涙にとってはどうしようもない嬉しさで、再び涙は泣き出してしまう。
「名前が涙だからって、泣きすぎ」
「そんなんじゃ、ないよ」
勿論無理をしてはいるが、そんな簡単な軽口を叩いて喩は消えた。【転移】をして、病院の廊下に移動したのだ。
背中を壁に預けながらずるずると体に下がっていく。涙の側にいることに、喩はそれ以上耐えきれなかった。そのまま座り込んで、喩は蹲った。
落ち着いてからスマートフォンを確認すると、予想通り、零からメッセージが送られてきていた。場所は三日前のあの場所。
零が初めて本性を見せた、怒りを見せた、あの廃ビルだった。
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