格闘ゴルフは知略とゴリラの勝負
ちびまるフォイ
※彼らは特殊な訓練と性癖を有しているので無傷です。
格闘ゴルフもついに大詰め。
お互いにゴルフクラブで激しい戦いを繰り広げています。
「さぁ、早く穴の中に入りやがれ!」
「いいや、穴に送られるのは君の方だ!」
格闘ゴルフは新しいファイティングスポーツ。
ゴルフクラブで戦って相手を先に穴へ叩き込んだ方が勝利。
さらに、この戦いでは賞金3億円が出るというから、二人の意気込みはまるで違う。
「オラァ!! さっさと気絶しやがれ!!」
「なにを!」
二人の戦いは激しさを増していく。
どちらも闘志が目に宿り続けている。
「この勝負ドロー!!」
第9ホールでもどちらも穴には入らなかった。
「ちっ……粘りやがって」
「勝負は次のホールで決まるということだね」
やってきた最終の第10ホール。
お互いボロボロで先に戦って意識を飛ばしたほうが穴に叩き込まれるだろう。
賞金のためにも絶対に負けられない戦い。
「フフフ……そろそろ本気を出してやろうかなァ」
男はキャディに頼んで新しいゴルフクラブを持ってこさせた。
「そ、それはまさか……!」
「正直これを使うと思わなかったぜ。
超次元電撃式ゴルフクラブ"電雷"。
ぼろぼろの状態のあんたにこの攻撃が耐えられるかな?」
ゴルフクラブ「電雷」はその超軽量でファイターの猛攻をアシスト。
このゴルフクラブで勝てた人はいない。
「そんな超高級ゴルフクラブをこの勝負のために……!?」
「勝ちゃいいんだよ。賞金3億もらえれば元が取れる。
悪ぃがこの勝負はかたせてもらうぜ。格闘ゴルフは力の勝負なんだよ」
「くっ……! 格闘ゴルフは知略の勝負でもあるんだ。勝機はある!」
「その知略も叩き割ってやるぜ!!」
最終戦の第10ホールの戦いがはじまった。
口火が切られるや、電雷の速攻が止まらない。
「オラオラオラ!! どうしたどうしたァ!!」
「は、はやいっ……!!」
攻撃を防ぐのが精いっぱいで相手にゴルフクラブを当てられない。
ゴスッ。
にぶい音とともに、ゴルフクラブが男のアゴをかちあげた。
男の体はふわりと浮き上がりそのままホール近くの池の中に落ちた。
「チッ。池ポチャか。運のいいやつめ」
池から相手が上がるのをじっと待つ。
あとは弱らせて穴に叩き込めば優勝は決まる。
しばらくして、相手が池から出てきた
男は攻撃の手を緩めることなく一気に攻める。
「オラァ!! さっさと穴ン中に入りやがれぇ!!」
ゴルフクラブを振り上げた瞬間、相手の巻き上げた水とバンカーが同時に目に入った。
「ぐあ!! て、てめぇ! 卑怯な手を!! ちくしょう!!」
相手は水とバンカーをゴルフクラブでまきあげて、
男はおろか大会スタッフの視界すらも奪ってしまった。
男は視界を奪われながらもめちゃくちゃにゴルフクラブを振って、
このチャンスに攻撃されないよう防御を続ける。
けれど、相手はただの1度も攻撃してこなかった。
「ふぅ……驚かせやがって。やっと目が慣れてきたぜ。
最後のあがきってところか?」
「いいや、勝利への布石だよ」
「そんなボロボロ勝てると思ってるのか? ん?」
「悪いが賞金は僕がもらう」
「面白れぇ!! だったら俺に勝ってみろよ!!」
男は電雷を振り上げて相手に突撃した。
「どんな策があるか知らねぇが、格闘ゴルフで勝つのは力なんだよ!!」
しなる電雷のゴルフヘッドが相手の体にクリティカルヒット。
相手の体は浮き上がってそのまま穴の中に吸い込まれた。
「テクニカルホールインワン(THO)だ! ざまあみろ!!」
思わせぶりなことを言っておきながら、結局はったりだった。
圧倒的な力の差を前に、小細工など無駄だった。
「さて、優勝賞金の3億円をいただくとするかな」
男は気分よく賞金が置いてあった場所へと向かう。
けれど、どこを見ても賞金が入っているジュラルミンケースが見当たらない。
「お、おい! 賞金はどこにいった!?」
「私どももわかりません! いったいいつ消えていたのか……」
スタッフも困惑しきっていた。
ちょうど、奥で観戦していたおじいちゃんがグリーンを指さした。
「そのケースじゃったら、さっき男がゴルフクラブでふっとばしてたぞい。
ちょうどホールインワンしたからわしもびっくりしたよ」
「さっきっていつだよ!?」
「お前さんがちょうど池のあたりで戦っていたころじゃな」
「あっ……!」
どうして相手が派手に目つぶしをやったのか。
その理由に気付いて穴に駆け寄ったときにはもう遅かった。
グリーンの穴には、男はおろか3億円のケースも残っていなかった。
格闘ゴルフは知略とゴリラの勝負 ちびまるフォイ @firestorage
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