第212話 夏の桜
暑い日中、裏の桜の木に水を撒いた。
渇いた土がムワッと匂いを放つ。
(土の匂い…夏の匂い…)
クロさんが鼻をクンクンと鳴らしながら、土の匂いを嗅ぐ。
濡れた草の匂いを嗅いで、桜の木を見上げる。
「姉さんの匂いした?」
大きなクロさんを抱き上げて、桜の木を間近で見せる。
視ているのは夏の桜か…夏の思い出か…。
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