俺と怪盗と都市伝説

 俺は怪盗ラスアンに勝つため、ロイヤルローズガーデンで八尺様となっていた。


「要約するとそういうことだ」


「いやいや意味わかんないよ!?」


「死地並べは続いているぞ!」


 死のカードが二枚俺に張り付く。そして尺数が減る。


「これで七尺様か。七はラッキーセブン。七が揃えば大当たり!!」


 胸に現れたスロットマシーンが777を揃える。

 これが大金持ちへの第一歩さ。


「必殺! フィーバータイム!!」


 大量に吹き出したコインの波が、ラスアンを飲み込んでいく。


「ぬおおおぉぉぉ!! だが負けん! カード一枚でコインを殺し、もう一枚で貴様を殺す!」


 ターゲットを自由に選べるのか。こいつは厄介だな。


「これで俺は六尺様……だからこの姿さ」


「なんでふんどし一丁なの!?」


 六尺ふんどしのみを身に纏い、同じ格好の男たちと神輿を担ぐ。


「六尺様は、六尺ふんどしをしめたやつらを呼び出せる!!」


 そのまま猛スピードでラスアンに突っ込み、盛大に跳ね飛ばす。


「こいつが六尺様名物、喧嘩神輿じゃーい!!」


「ぬぐわっはああぁぁぁ!?」


 これにはたまらず大ダメージだ。よしよし、このままいけば勝てる。


「すごい! やっぱりマサキ様はすごいよ!!」


「何が何やらわかりませんが、いいですぞマサキ殿ー!!」


「次は五尺様だぜ!!」


「ちっ、次は何をしてくる!!」


「…………えー……あれだな、あれだようん」


 なんかあるだろ俺。思いつけ。もっと脳を活性化させろ。


「とったぞ!!」


 考え中にカードが飛んでくる。これはまずい。


「マサキ様! 別の都市伝説だよ! こだわりを捨てて!!」


「ナイスサファイア! ぬうん!!」


 別に尺数にこだわらなくてもいいのだ。

 俺とラスアンの直線状に線路を形成。即席の駅が誕生する。


「都市伝説シリーズきさらぎ駅!」


「何だこれは?」


 警戒しているようだが遅い。すでにラスアンの背後から、全速力の新幹線が突っ込んできている。そう、俺の変身した新幹線がな。


「白線の内側でお待ちくださああああい!!」


「んなにいいぃぃぃ!? ぎゃあああぁぁぁ!!」


 跳ね飛ばして即変身。猛スピードで追い打ちをかける。


「チェーンジ三尺様!!」


 ここで三尺様に変身。大砲の中に入り、空中にいるラスアンへと一直線。


「三尺様は三尺玉。夜空に花火を上げましょう!!」


 見事に俺花火が直撃。夜空に大輪の花を咲かせた。


「ぶわっしゃあああぁぁぁい!?」


「おかしい。致命傷のはずだぜ」


 俺の尺数が二まで減っている。

 傷つきながらもカードを貼り付けてきたというのか。

 やたらスタミナあるなこいつ。


「もう許さん。この手だけは使いたくなかったが……」


 ラスアンの両手から、ドス黒い怨念の塊が溢れ出す。


「なにあれ……凄く怖い……」


「これは今までワシに殺された者の怨念だ! こいつらは貴様を引きずり込むまで止まらんぞマサキ!!」


「怨念には怨念で対抗してやるよ。スイッチオン!!」


 駅が左右に割れていき、下からどでかいミサイルが登場する。


「なんか変なの出てきたー!?」


「これが……コトリバコ搭載ICBMじゃああああああぁぁい!!」


 ミサイルにまたがり、敵の怨念とぶつかりあう。

 大爆発を起こし、黒い怨念が渦巻くも、どうやら倒れてはいないようだな。


「ぬうおおおおおぉぉぉぉぉ!! そんなわけのわからんものに、ワシが負けるはずがない!!」


「負けんさ!! マサキのGはがんばりやさんのGだ!!」


「G入ってないよ!?」


 意外にも耐えやがる。ならばもっともっといくぜ。


「いくぜオリジナル都市伝説!」


 背中のソーラーパネルに太陽の光が届く。

 光り輝く俺は、体を縦に真っ二つに開き、そこから渾身のビームを放つ。


「ギガソーラーレーザー!!」


「ただの兵器だー!?」


 光と闇の力が合わさり、なんか最強に見えなくもない。

 確実に押している。ここが勝負どころだぜ。


「サファイア! そのへんのもん適当にくれ! 都市伝説にする!」


「意味わかんないよ!!」


「いいから早く!」


「ええとええと……ええいこれでどう!!」


 サファイアが投げてきたものをキャッチし、ラスアンへ突進。


「オリジナル都市伝説!」


 すれ違いざまに、顔面へスイカを丸ごとぶつけてやる。


「光速スイカ投げおじさん!!」


「ぬぶはああぁぁぁぁ!?」


 破裂するスイカと、ぶっ飛ぶラスアン。

 よしよし、完全に俺のペースだ。


「食べ物は大切にな」


「どの口が言ってるの!?」


「ぐぐぐ……せめてご神体だけでも……」


「お前の目的は何だ? 宝なら別のものでもいいはずだろう?」


「怪盗皇帝様を……復活させるためだ」


 よくわからんこと言い出したよ。誰よ。俺の知らん人だ。


「貴様ら怪盗結社だな!」


「そうさ、皇帝を復活させ、再び我々が世界を盗むのだ! 怪盗大決戦の再来だよ!」


「知らん単語ぶち込み続けるのやめてもらえます?」


 置いてけぼり度マックスだよ。まったくわからんぞ。


「昔、怪盗が徒党を組んで、世界を混沌の渦に巻き込もうとしたのです」


「封印された怪盗皇帝を解き放ち、再び我らが世界を盗む!」


「封印ねえ……まだ生きている保証でもあんのか?」


「あの方は不死だ。死なぬまま完全なる無の空間にいる。怪盗にとって、盗む物のない空間など地獄そのもの」


 なるほど、いい罰だ。センスがある。


「復活のため、この御神体もいただくぞ!」


「甘いな。俺が御神体をすり替えていたことにも気づかなかったか」


「なにい!?」


 ラスアンの手には、六尺ふんどしを締めた男が握られていた。


「六尺様のときにすり替えておいたのさ!!」


「いやいやいや気づくでしょ!? っていうかまだいたの!?」


「くっ……完全に気づかなかった……」


「どうして!?」


 動揺は隙を生むぜ。

 背後から迫る、六尺ふんどしを締めたムラクモさんに気づけないほどに。


「とったあああぁぁぁ!!」


 ムラクモさんががっちり抑え込む。

 ふんどしでも兜は外さないようだ。


「えええぇぇぇ!? ムラクモさんなにしてるの!?」


「セイヤアアァァァ!!」


 ふんどしAとムラクモさんのダブル六尺が、上空へとラスアンを投げる。

 俺もそれに続き、上からラスアンの首を固定。

 三人でがっちり掴み、フェイバリットホールドへと入った。


「必殺異世界チート! 三位一体! 都市伝説バスター!!」


 そのまま回転を加えて急速落下。

 轟音を伴い、大地を揺らし、怪盗ラスアンを叩きつけた。


「がはあああぁぁぁぁ!?」


「もう都市伝説関係ない!?」


 完全に意識を失ったラスアンが、爆発を起こして成敗完了だ。


「終わったな」


 六尺は消え、俺とムラクモさんの服も戻った。


「おそるべしマサキ殿……このような戦い方は見たことがないであります」


「それに混ざってましたよね?」


「マサキ様、とりあえずご神体を……」


「そうだな。こいつを戻し……ない?」


 御神体がどこにもない。おかしいラスアンを倒したのだから、もう盗まれることはないはず。


「サファイア、お前見てないか?」


「見てないよ。戦いに集中してたし」


「妙ですなあ。自分も知りませんぞ」


 そこでムラクモさんの兜に、カードが張り付いている事に気がついた。


「ムラクモさん、その兜」


「本物です」


「本物? カードみたいなものがついてますけど」


「えっ、ああこれですか。ついてますなあ。何でついてんのこれ」


 兜からひっぺがしている。メッセージカードのようだ。


「えー……あなたたちが戦っているうちに、ご神体はいただきました。これで皇帝復活にも手が届きます。ありがとうございました。怪盗トラブルシスターズ」


「えぇ……まだ仲間がいたのかよ」


「どうするの? 急いで追わないと」


「といってもなあ……どこに潜んでいるかもわからないのに」


『マサキ様、聞こえますか?』


 ユカリからの魔法通信だ。


「どうした?」


『今動力室なんですが、よくわからない姉妹が攻撃してきて……どうやら結界を維持する機能を破壊しようとしているみたいです!』


「マサキ様! 急がないと!」


「仕方がない……先にユカリのもとへ行く、後から来い!」


 そして俺の体は光り輝く。


「必殺異世界チート!」


 ここは動力室。パイプや複雑な装置がある広い場所。

 そこにいた女将とユカリを発見。早速ユカリにチートをかけ、大量に紙を吐き出させる。


「べばあああぁぁぁ!?」


「きゅっ!? なによこいつ!!」


「お姉さま!!」


 大量に吐き出された紙は、やがて形を成していき、立派な俺が現れた。


「必殺、女神3Dプリンターの術!!」


 こうして瞬時に移動が可能なのだ。


「くっ、この男どこから!」


 どうやらこいつらが怪盗姉妹らしいな。


「悪いがこいつに危害は加えさせないぜ!」


「今加えたところでしょうがああぁぁ!! 何するんですか! 死ぬかと思いましたよ!!」


「すまん、あれ以外の移動方法がないんだ」


「限定的すぎるでしょう!?」


 正直二連戦は避けたいが、ここは仕方あるまい。

 ユカリと組んで倒すのみ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る