機械神と文明と出世魚

 ロボクロユリと広い平野でバトルを繰り広げるが、いまいち乗り切れない。

 ここはひとつ、俺も奥義でテンション上げていこう。


「スナイパービーム発射」


 スナイパーライフルからビームが飛び出し、俺の頭部を消し飛ばした。


「マサキ様!!」


「ほう、完全に異世界ファンタジーから外れたな」


「あなた人の道から外れてますよ!?」


「問題ない。メインコクピットをやられただけだ」


「致命傷ですよね!?」


 すぐに頭部パーツを転送してもらって合体完了。

 さて仕切り直していこうか。


「最終殲滅モードへ移行。世界の破壊ヲ対象ノ抹殺後へ変更」


「お前がファンタジーもSFも内包し、最新機器で立ち向かってくるならば、俺は人類の歴史で相手をしよう。必殺異世界チート!!」


 眩い光に包まれた俺は、毛皮を纏って石斧を持つ。


「いっちょやってやるウホ!」


「原始人みたいになったー!?」


 石斧と大きな石の輪っか、つまり貨幣をぶん投げて攻撃。

 輪投げの容量でロボユリを拘束完了。


「いくぜマンモス大行進!!」


 マンモスの大群とともに、動けない敵を踏み潰して行進していく。


「ティラノスラッシュ!」


 ティラノサウルスと一緒に爪で攻撃。

 プテラノドンに乗って銃撃をかわしていく。


「損傷率10%。戦闘続行」


 執拗なミサイル攻撃により、恐竜たちが倒れていく。


「おのれ罪のない生物をよくも……ならば必殺!」


 上空へと飛び上がり、巨大隕石に乗ってロボユリに直撃。


「氷河期大到来!!」


 周囲を一瞬で銀世界へと変え、その大小として恐竜は絶滅した。


「ああああぁぁ!! てめえよくも恐竜さんを!!」


「マサキ様がやったんでしょ!!」


「ヒートモード」


 灼熱地獄かというほど炎で荒れ狂う。

 こいつ結構多芸なんだな。

 水蒸気が晴れたその時、俺は巨大な土偶に乗っていた。


「ぶん殴れ! 土偶!!」


「打撃モード」


 ビッグ土偶のパワーとまともに殴り合ってくるロボユリ。

 やはり神の最高傑作は伊達ではないな。


「ミサイルビット発射」


「ハニワミサイル!!」


 ハニワが火を吹きミサイルとぶつかって爆散していく。


「おおー! ちゃんと撃ち落とせてる!」


「当然だ! 人類の進化は止まらないぜ!」


「ハイパーブレードモード」


 ハリネズミかと思うほど体から剣を出してきた。

 しかも刃がかなり長い。

 ハニワを切り裂き、爆発する前に進んでくる。


「ならば一気に時代を進めてやるぜ! いくぞ武将たち!!」


 和洋中さらには全世界の名将が現れる。

 サムライも騎士もごっちゃだ。

 全員で一斉に飛びかかり、刃ごとロボを両断する


「万国博覧斬!!」


 刃と翼を切断されたロボは、そのまま地面へと落ちていく。


「損傷率57%。自己修復開始」


「させるか! 文明の利器は終わらない!」


 武将を汽車へと変え、落ちてくるロボへと突進開始。

 俺も新幹線へと变化。トップスピードでいくぜ。


「文明クロストレイン!!」


 交差する列車にぶつかり、挟まれて削れていく。

 火花が飛び散っている様子から、どうやら装甲は完全に金属のようだな。


「損傷率82%」


「すごい! あのロボを追い詰めてる! やっぱりマサキ様は強い!!」


「射撃支援要請」


「なんだと?」


 天に紫の星が輝いたと思えば、空から同じ色の天井が落ちてくる。


「ぬおおおおおおお!!」


 武将トレインが消えていく。俺の変身も解除され、普通の俺に戻った。


「どうなってやがる……」


 地表が大きく削れ、最早底など見えない黒く暗いクレーターがあるだけだ。


「コア射出」


 猛スピードでロボのコアが天へ飛ぶ。

 ちょっと急展開すぎやしないかね。


「マサキ様! ご無事ですか!!」


「ユカリ!」


「衛星からの砲撃です! ロボに何かあった場合に備え、軌道上に補給と星の破壊用に衛星を作っていたみたいです!!」


「洒落にならん真似してくれやがって」


 用意周到にも程がある。こりゃかなりまずいことになったな。


「急いでコアを追いましょう。完全に衛星と融合する前なら、破壊もまだ簡単なはずです」


「よし、行くぞ!」


 竹馬に乗り、今日一番の真面目な顔でユカリを背負う。


「なんで竹馬!? せめて飛べる乗り物にしましょうよ!!」


「伸びろ竹馬!!」


 光速で上へと伸びる竹馬。これならコアに追いつける。


「うわわわわわわわ!! 速い速いですって!!」


「だから追いつける。掴まってな!」


 いける。最速で宇宙へと飛び、コアの光が飛んでいくのを見た。


「あれが衛星か。星ほどでかくはないが……要塞としちゃ上等だな」


 ハイテクな鋼の球体に、土星の輪みたいなリングが付いている。

 球体から外へと伸びた巨大な砲塔は、さっき威力をこの身で確認させられた。


「急ぎましょう」


「竹馬は上にしか伸びん」


「竹馬にこだわらなくていいですって!」


「仕方ねえ、ならナスだ!!」


「ナス!? なんでナス!?」


 大きなナスとキュウリに割り箸で四本脚を作ってやる。


「完成だ! 乗れ!」


「これお盆に飾るやつだ!? バチ当たっちゃいますよ!」


「当てるのは神だろ? ユカリが当てないように交渉しといてくれ」


「えぇ……まあ緊急事態ですし……そもそも異世界ですしね」


「同じ神だ、融通効かせてくれるさ」


 全速力で宇宙空間を駆け抜ける。揺れも少なく快適だ。


「やっぱり宇宙はナスとキュウリに限るぜ」


「意味わかりませんよ!」


「撃ってきたぞ!」


 当然というべきか、ビームだのミサイルだのが飛んでくる。

 その光に混ざって、コアが内部へと入って行くのが見えた。


「地上とやってることは同じか。ワンパターンなやつだ」


「私が迎撃しますから、そのままの速度でコアと同じ場所から入ってください!」


「頼むぞ!」


 ユカリの的確な援護により、コアの侵入経路からさらに衛星内部へ。

 広い鉄の筒のような場所を疾走あるのみ。


「いた! あれだ!」


 紫の光が飛んでいる。ついに見つけたぞ。


「渡さなイ。この世界ハクロユリ様のモノ」


 ここが終点なのだろうか。

 巨大なモニターと立体映像が乱舞するホールのような場所だ。

 一番大きな画面にロボキスが映っている。


「クロユリは死んだ。もういない。こんなことをしても無意味だ」


「予定通りコノ世界ヲ破壊スル。任務ハ変わらなイ」


「そこまでする理由は何なのです?」


「それコソが私ノ存在意義。この世界ハクロユリ様ノ実験場。後片付けモ私ノ役目」


「はた迷惑なやつだな」


 こいつはどこまでいってもロボットだ。ただ命令を実行するだけ。

 それはクロユリが死んでも変わらないらしい。


「この場所なら確実に始末できる。五分で星を砕く衛星砲は発射される。止められるものなら止めてみるといい」


 饒舌になりやがって。衛星に取り込まれてCPUが上がったのかね。


「火炎地獄」


 モニターに炎が映り、立体映像がそのままホールに投射される。

 そして灼熱の世界へと変わっていく。


「投影で世界そのものを改変している……なんて技術力なの!」


「あらやだあたし今焚き木なのに! 燃えちゃう! 燃え移っちゃうわ!!」


「どうして!?」


「焼いても死なないなら冷ます。海原地獄」


 焚き木だった俺を海が包み込む。

 その勢いは凄まじく、またたく間に消化された。

 やはりモニターと同じ状況になるっぽいな。


「マサキ様! このままでは不利です!」


「問題ない。俺は出世魚だ」


 しらすの佃煮からシロナガスクジラへと出世した俺に隙は無い。


「無理のある出世の仕方したー!?」


 ちなみにユカリは女神なので、宇宙だろうが海の中だろうが普通に活動できる。

 人間とは根本的に作りが違うのだ。


「やれやれ、こいつは強敵だぜ」


 だがやれないほどじゃない。見せてやるよ、俺の渾身の異世界チートをな。

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