裏ボスとの戦い
化け物との戦いを終え、止まったエレベーターをどうにかしていた。
「コノハがいてくれてよかったよ」
コノハの活躍で無事に動き出し、最下層までたどり着けたのだ。
「てへへー、いえいえそんなー」
コノハは照れながらもどこか誇らしげだった。
「お手柄ですよ」
芸というのは身を助けるのだなあ。実感したよ。
「これでようやく最後のステージか」
「ラスボスいそうですね」
ユカリが嫌なこと言い出したよ。
「まさか、さっきのデカブツで腹いっぱいさ」
「慎重に行きましょう」
通路の先には豪華で木製の扉があった。
左右両開きだ。どうも近代的なイメージではない。
「開けるぞ」
「お願いします……コノハちゃんは私の後ろに」
怯えつつ弓を構えるコノハと、魔法をすぐ撃てるように待機しているユカリ。
やはり戦闘経験豊富なんだろう。
ゆっくりと扉を開けた。
「ここは……教会?」
あまり入ったことはないが、教会の中ってこんな感じじゃないのか。
中央によくわからん柱とパイプオルガンがある。
あとは木製の椅子とか、ステンドグラスまで完備。
「おやおやー? 礼拝堂のようですね……」
「なんでこんなもんが……目的がわからんな」
「オルガンにスイッチありますね。押しちゃっていいですよね?」
ごく自然に押しているユカリ。罠だったらどうすんのさ。
「聞きながら押すなや!」
「うわわわわ! 何か出ましたよ!」
オルガンの左右にコンソールと巨大モニターが出る。
「やりました! どうもここがデータ保管室みたいです!」
「まあ最下層っぽいしな。コノハ、目的を洗い出してくれ」
「はーい了解です! 少々お待ちを!」
コノハの動きに淀みがない。こういうの本当に得意分野なんだろうな。
画面には様々なデータと報告書が流れていく。
「記録の持ち出しはされていないようですね。ここで人造人間を作っていたようです」
「ここで?」
「オルガンの音を聞かせ、神を意識させて自分への信仰心を稼いでいたみたいです」
神は信仰心によって強弱が変わるらしい。
女神界はそういう法則とは違う。こいつらは特別なのだそうな。
「増幅した力を、ここからさっきの場所へと流していたようです」
「それでやたら強かったのかあいつら」
「邪神というのは面倒ですね。よーしとりあえずデータは映し終わりました。ここのは全消去して、ずががーんと爆破して帰りましょう」
今回はすんなり終わるっぽくてよかった。
さっさと帰って休もう。
『自爆シークエンス作動。証拠隠滅のため、ワールドデストロイモード開始。停止する場合は十秒以内に声紋照合・指紋照合をお願いします』
「不穏なアナウンス来たぞおい」
「隠しモード? こんな仕掛けがあったなんて!」
中央の大きな柱が開き、中から鋼鉄の身体を持つクロユリが出てきた。
「な……おいおいマジかよ」
機械仕掛けの翼が六枚。腕にも足にも機械的なパーツが埋め込まれている。
「起動確認。すべてヲ破壊スル」
「喋った!?」
「クロユリは誰にも情報を渡すつもりなんてなかったんです。ががっと改造人間を作り、ぴしっとデータを取り、最強の人造人間を完成させたら、この世界を消して性能テストをするつもりだったんです!」
「最悪だな。自分をモデルにするって所も趣味が悪い」
なんとしても破壊しなければいけない。
せっかくみんなで手にした平和なんだ。
「斉射モード」
背中から腕から足から腹から大量の重火器が出てきた。
おいおいファンタジー世界だぞ。
「結界!!」
二人が結界を張ってくれる。豪快な爆発が続いているし、そろそろ動くか。
「コノハちゃん!」
「はい!」
「何をする気だ?」
「二人で爆破魔法を置いて、全員で外へ転移します。ここも自爆するようですし、案外壊れてくれないかなって」
「それでいこう!」
戦わずに済むならそれがいい。
大きな魔力の球体を作ったダブル女神は、俺を連れて外へと転移する。
「転移開始!!」
無事に外へ出てきた。
階段があった場所からはかなり離れているようで、何かが起きても大丈夫な気がする。
「あうう、危ないです。一応結界を張ってそーっと耐えましょう」
「すまない。やつが生きていたら俺がなんとかするよ」
「期待していますよ。コノハちゃん、急ぎましょう」
そして大きな揺れと、かつてないほど巨大な爆炎が天へと舞い上がる。
あまりにも大きな炎と煙の柱は、結界がなければ相当の衝撃だったろう。
「…………あんなもんが地下にあっちゃ、おちおち寝てもいられんな」
「想像以上でした。マサキ様がいなければどうなっていたか」
「被害は周辺だけにとどめました。かなり強力な結界を張ったので、わたしはしばらく動けません」
「ありがとうコノハちゃん。あなたはギャンゾックに帰ってゆっくりしてください」
「ああ、ここからは俺の仕事だ」
炎の中に何かいる。やはりそう簡単に裏ボスは死んじゃくれないようだな。
「行ってくださいコノハちゃん」
「かなり大規模な戦いになるだろう。避難してくれ」
「…………わかりました。絶対帰ってきてくださいね! 信じてますから!」
「ああ、約束だ」
心配そうなコノハを送り出し、改めてクロユリもどきに向き直る。
羽を広げ、全身のブースターで飛行する姿はまさに人造人間。
「対象ヲ確認。破壊スル」
「やってみなポンコツロボ」
ダンボールで作ったロボに乗り込み、クロユリロボを睨みつける。
「そっちの方がポンコツですよ!?」
「ミサイル発射」
「こっちも発射あぁ!!」
火をつけた爆竹を手づかみで投げつけてやる。
「そんなんで対抗できるわけないでしょ!?」
ミサイル群の手前で軽い音をさせながら散っていく爆竹たち。
「何が足りない! 火力か! 火力が足りないのかあああぁぁ!!」
「全部ですよ全部……」
集中砲火をくらい、俺のマシンは大破してしまった。
「くっそ、ならロボ二号だ! 今度のはダンボール二枚重ね!!」
「意味ないですって! 燃えない素材使いましょうよ!」
「一斉射撃開始」
ミサイル以外もじゃんじゃん飛んでくる。
「ええい自爆!」
仕方がないのでロボを自爆させる。ここからが腕の見せ所だ。
「ロボ二号を生贄にして、時間停止機能を作動! お前は十秒動けない!」
「やった! いやはじめから使いましょうよそれ!」
「しまった! 自爆させたから攻撃するロボがいない!!」
「ロボにこだわらなくていいでしょ!!」
どうする? このままではロボ対決ではなくなってしまう。
それではダメだ。なんかダメな気がしているのだ。
「そうか! あの手があったか!」
「さてはろくでもないこと思いつきましたね……」
「俺が……俺がロボなんだ!」
「そっちいっちゃいます!?」
俺の頭がパカッと開き、小さい俺が操縦席に座る。
「よし!」
「何が!?」
「各システムに問題ナし。外敵ヘノ攻撃続行」
でもロボユリが動き出しちゃった。十秒って意外と短いよね。
「間に合わなかったー!!」
「さっさと攻撃しないからでしょ!!」
「俺ビーム!!」
とりあえず目、鼻、口からビームを垂れ流して迎撃。
ミサイルは封じた。あとは空中戦だな。
「俺ウイング!!」
「おぉ! 空も飛べるんですね!!」
「残念だが……俺ウイングなんてものはない!!」
「じゃあなんで言ったんですか!?」
「俺ウイング!!」
「うるさいですよ!!」
何度叫ぼうとも、無いものは無いのである。
「全機能を持ってしても、手も足も出ないとはな」
「機能すっくな!?」
「近接殺戮モード」
全身からビームの刃を生やし、超高速で突っ込んでくるロボユリ。
「ならば俺はティッシュモードだ!!」
避けるために一枚のティッシュへと変身。これで問題ない。
「よりによってティッシュ!? 死んじゃいますよ!!」
「安心しろ! やつのは機械的な暴力に過ぎん!!」
なんと敵の突進力が強すぎたために、風圧で俺が明後日の方向へと飛んでいく。
「すごい!! ロボのパワーが強すぎて、マサキ様に攻撃できないんだ!!」
「これが人間様の応用力だ!!」
「対象ノ破壊困難。無差別殲滅モードニチェンジ」
「おいおい嫌な予感がするぞ」
なんと全方位にあらゆる攻撃を連射し始めた。
「うぅ……なんて火力なの……」
「ちい! ティッシュじゃ燃えちまう!」
人間形態へと戻り、必殺技の準備を整える。
「いいだろう。ならばさらに本気を見せてやるぜ!!」
いつまでもポンコツの独壇場だと思うなよ。
反撃開始だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます