改造人間軍団VS刺し身軍団
帝国地下研究所へと潜入した俺と女神二人。
長い階段も、それより長い通路も進み、巨大なエレベーターを見つけた。
「どう思う?」
中央にコンソール発見。円柱形で、上下左右がガラス張りだ。
「この下が本番ですね」
ゆっくりと降りていく。エレベーターそのものがかなり広い。
物資の搬入でも想定しているのだろうか。
「さっさと資料みつけて帰るつもりだったが……長旅になりそうだ」
「すみません。本来わたしたちでずばっと解決するべきなのですが」
「マサキ様はなんだかんだついてきてくれますよね」
「恩もあるからな」
そこで俺たちを光が照らした。
一瞬だが全身を昇っていって消えたな。
「なんだ今の?」
「光認証システム!? バレました!!」
警報が鳴り響き、遠くの壁がシャッターのように開く。
そこには無数のカプセルに入った人造人間がいた。
「ここが保管室だったってわけか」
カプセルが開き、エレベーターのガラスをぶち破って数十体の人造人間が入ってきた。
それでも足場は十分にあるが、これは厄介だぞ。
「あわわわわ、どうしようユカリさん!」
「女神に倒せないほどではないはず。落ち着いて対処しましょう」
じりじりと無表情で距離を詰めてくる敵。
自我のない命令を聞くタイプなのかも。
「やれやれだな。改造人間め、いつまでも生態系の頂点だと思うなよ。お前らは今から捕食される側だ!」
「マサキ様、何かいい案が?」
「あるさ。必殺異世界チート! 刺し身軍団緊急出動!!」
豪快な音と振動を連れて、壁にジャンボジェット機の頭が突き出てくる。
「飛行機が突っ込んできたあああぁぁ!?」
「待ってたぜ、刺し身軍団!」
「おうよ!!」
色とりどりの刺し身たちが飛び出してきた。
輝くその身は鮮度の証。期待できる援軍だ。
「思いっきり捕食される側だー!?」
「いくぜ!!」
俺も等身大のマグロの刺し身となって加勢する。
「マグロダイブ!!」
ボウリングのピンのように吹っ飛んで散っていく敵。
よしよし、このままいくぜ。
「鮮度が違うんだよ鮮度が!」
「マサキに続くシャケ!」
「了解ヒラメ!」
他の刺し身も続々と加勢し、敵をなぎ倒す。
「刺し身強い!? なんで!?」
「中トロ、大トロ、合体攻撃だ!」
「よしきたトロ!」
「いくマグロ!」
三人で回転しながら敵の足元を滑り、上空へと飛ばす。
下に丼を用意して、敵を掴んで上から丼に叩きつける。
「三位一体! びっくり鉄火丼バスター!!」
「なんかすごい技出たー!?」
これででかい敵も鉄火丼となった。
超熱いご飯から抜け出す体力はないだろう。
「なんですかこれ……ユカリさん、これどういうことですか……?」
「へっ、刺し身だってのに魂が燃えたぎってるぜ」
「変なこと言い出した!?」
「焼いて焼かれて魚道。おれたちゃ死ぬまで魚だぜ」
「もう死んでますよね!? 刺し身ですよね!?」
「焼かれてもいないと思います……」
かなり数は減らせたはず。このままどんどんいこう。
攻撃の手を緩めてはいけない。
「マサキ! フグになりな!」
「どういうこと!?」
「任せろ!」
「いいの!? っていうかなるの!?」
フグの刺身になり、他のフグと一緒にその身を細かく刻んで敵の口にねじ込んでいく。
「必殺フグの毒アターック!!」
「なんて……なんて華麗な奥義」
「ユカリさん!?」
ユカリが見惚れるのも無理はない。
切り身が花びらのように舞い、敵の口へと入っていくのだ。
それは一種の芸術と言える。
「オオオオオォォォォアアア!!」
この世のものとは思えない咆哮が響き、全員の動きが止まる。
「どうした!?」
「何かが……来ます!」
エレベーターが大きく揺れて止まる。
まだ出入り口のようなものは見えていない。
「故障か?」
「アアアアアァァァ!!」
それは突然現れた。最初は大きな腕が二本。
そこから巨大な人間と機械の混ざった上半身がエレベーターに乗ってきた。
「気持ち悪い……これも改造人間?」
「うえぇー……未完成というか……ぼろぼろ、失敗作のように見えますね」
体中にパイプやらチューブが伸び、見上げるほどの上半身が剛毛で覆われている。
「ホラー映画みたいだな」
「はわわわわわ、どうしましょうどうしましょうユカリさん!!」
「落ち着いて。まずは残っている敵を倒しましょう」
別にコノハも弱くはない。弓とか槍をうまく使って戦っている。
心配性というか、怖がりなのだろうか。
「ああああ!? た、食べられる!!」
刺し身が大きな手に掴まれ、デカブツの口の中へと放り込まれている。
「もっと醤油とかつけて食べて欲しかったああぁぁ!!」
「食べられるのはいいんだ!?」
「あいつら刺し身だからな」
言っているうちにも食われていく。
改造人間にも食い物が必要なんだな。
「おれたちはここまでってことかい。なら華々しく散ってやるぜえ!」
刺し身たちが手榴弾を取り出している。まさか自爆する気か。
「やめろ! そんなことをしたら、そんなことをしたら焼き魚になっちゃう!!」
「そこ!?」
「食われちまった連中も装備している。刺し身だからな」
「理由になってませんよ!?」
決死の覚悟か。どいつもこいつも命知らずな野郎だぜ。
「なら俺も行くぜ。俺だって今はマグロなんでな」
「いいのかい? お嬢ちゃんたちを残して」
「帰ってくりゃいいさ」
「ユカリさん、どうすればいいんですか?」
「これがマサキ様名物、蚊帳の外です。ほっときましょう」
俺と大トロが敵の両手に掴まれる。
「来たぜ、醤油をかけな!」
「おうよ!」
お互いの頭に醤油をかけ、おいしく食べられる準備は完了した。
「マサキよ……おれはうまそうなトロかい?」
「ああ……極上の大トロだよ」
「なんですかあのやりとり」
「別れの決め台詞だと思うから、見守ってあげましょう」
女神に見守られる中で、俺たちは敵に食われていく。
口の中には多くの仲間たちが待っていた。
「刺し身の寿命は短い」
「ならばせめて、美しく食われよう」
「これだけの魚介類がいるんだ。派手に散ってやろうじゃねえか!」
「いくぜお前ら!」
全員が手榴弾のピンを抜き、その時を待つ。
「必殺異世界チート!!」
そして化け物の体内から光が溢れ、かつてないほどの大爆発を巻き起こす。
「魚介特盛り散らし寿司!!」
「ガアアアアァァァァァァ!!」
超ド派手に散った寿司と俺と化け物。
最早欠片も残っちゃいない。
「マサキ様ああぁぁ!!」
「ありがとう、みんな」
「普通に横にいるうううぅぅ!?」
「おかえりなさい」
「おう、今回は強敵だったな」
ユカリが俺におしぼりと水をくれる。
敵も全部倒したし、ちょっと休憩かな。
「いやいやいやいや爆発しましたよね! どーんてなりましたよね!?」
「したぞ」
「しましたね」
「じゃあなんでここにいるんですか!」
「いいじゃん」
「いいじゃん!?」
コノハの言いたいことがよくわからない。
みんな無事で敵も倒せたのにどういうことだろう。
「マサキ様、エレベーターがボロボロですよこれ」
「直せるか?」
「なぜ普通に会話しているのですか……」
戦闘でかなり損傷したようで、スイッチ押しても無反応だ。
こいつは困ったな。装置が未来的で手に負えん。
「下におります?」
「エレベーター落ちてきたら危ないだろ」
「ふむふむふむむー、急な衝撃で一時停止したみたいですね。安全保護プログラムといいますか……」
意外なことにコノハが詳しいようだ。これは嬉しい誤算と言えよう。
「解除できるか?」
「はーいやってみます! 今のうちに回復と休憩をしてください」
「布団でも敷くか」
「寝る気ですか!?」
「お茶入れますね」
「……ユカリさんが遠くに行ってしまう気がします」
修理が終わるまで、ゆっくり座ってお茶飲みながら待つことにした。
無論コノハの分もある。女神ってのは不思議だな。
機械が得意な神ってのも面白い。
「がんばれコノハ。欲しい物があったら言ってくれよ」
「うむむー、少し複雑で……わたしにもお茶ください。ずぞぞー」
「お菓子もありますよ」
そんな感じでゆったり修復は進んでいった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます