ブラックホールについてよく知らないけど想像でなんとかした結果

 神殿に攻撃してくる敵を倒そう。


「転移ゲート開け。あいつらのめっちゃ上にな」


「はい!」


 ゲートが開かれたら、敵が気づく前に爆撃開始。


「ミサイル発射ー!!」


「はっしゃー!」


 ミサイルが次々に敵へと降り注ぐ。


「えええぇぇぇ!? 戦法がエグい!?」


『ぎゃあああああぁぁ!?』


『うわああああ!?』


『敵か! おのれどこだ!! どこから攻撃している!』


 バレる前にゲートを閉じた。敵さん大混乱である。


「よし次はもっとザコの多い場所だ。どうせボスは死なん」


「ラジャー!」


 ゲートを開く瞬間には、俺とユカリはロケットランチャーを構えている。


「ファイアー!」


「地獄に落ちな!!」


 上空からの攻撃と爆風によりガンガン壊滅していく敵兵さん。


『まっまただ!?』


『どこから攻撃があああぁぁぁ!?』


『げぎゃあああぁぁぁ!?』


『おのれ卑怯な! 正々堂々と勝負しろ!!』


「嫌じゃボケ」


 さらに数回爆撃を続け、見事ボス以外を壊滅させた。


『ぬううぅぅ!! 我が改造兵士をこうもあっさりと!』


「それじゃあ行って来る」


「いってらっしゃーい」


「気をつけてね。油断しないで」


「わかってる」


 そして俺がゲートを潜り、敵将の前に参上。


「お望み通り、正々堂々と勝負だ!」


『いや図々しい!? さんざん爆撃したでしょ!?』


 サファイアの声が聞こえる。通信もバッチリだな。


「三騎士を倒したというのはお前か?」


「その通り。お前もここで消えてもらう」


「くだらん妄想だ。グラビトンクロー!」


 三本の鉤爪から繰り出される重力波を避けようとするも、足が重くなり直撃をくらう。


「ちっ、どういうことだ」


 両腕でガードしたためなんとかなったが、これはもしや。


「かかったな。爪を受けたものは、重力を二十倍まで上げられるのだ」


「くっ、確かに重い気がするぜ。ならばこうだ!!」


 とっさに腰へと風船をくくりつける。


「これでよし!」


『いやいや無理だって!?』


「ならば風船二個だあぁぁ!!」


『そういうことじゃないでしょ!?』


 ちょっと浮いた。これで自由が効くぜ。

 そのままサンパーへとフライングクロスチョップをぶちかます。


「ちぇいさあああぁぁぁ!!」


「ヌオオォ!? この私の顔に傷を!」


「貴様の重力操作は確かに強いのだろう。だが存在からしてふわふわしてる俺には通じん!!」


『理由がふわふわしてるー!?』


「ならば見せよう、秘奥義ブラックホールスマッシャー!」


 サンパーの両腕に渦巻く黒い魔力が、俺を周囲の景色ごと吸い込んでいく。


「こっ、こいつは……引きずり込まれる!」


「二度とこの地へは戻れんぞ。フハハハハハ!!」


『マサキ様!!』


「うわあああああぁぁ……」


「これで終わりだ!」


「……ぁぁぁあああああただいま」


 そして完全にブラックホールに取り込まれた俺は、バスローブを身にまとって戻ってきた。


『しれっと戻ってきたー!?』


「いいお湯だったぜ」


『それお風呂じゃないよ!?』


「どういうことだ!? 戻ってくることなどできんはず!」


「いつまでも入っていたら、のぼせちゃうだろうが!!」


 湯上がりでほてった体をそのままに、右ストレートでサンパーの顔を殴りつける。


「ぶべあああぁぁ!?」


『あくまでお風呂と言い張る気だ!?』


「さて、牛乳でも飲みに行くかな」


「バカな……なぜ通じんのだ……私は三騎士をも超える男だぞ」


 ショックを受けているようだが、この程度では本当に三騎士より強いかわからんな。


「ならば神殿ごと亜空間へ落ちろ!! ブラックホール・フルドライブ!!」


 サンパーがブラックホールと同化し、俺をホール内へと引きずり込んだ。

 そこは闇だけが支配する無の世界。


「フハハハハハ!! この世界では私こそが王! この世界すべてが私だ!!」


 巨大なサンパーの顔が闇に浮かんでいる。

 なるほど、これは少々手強いな。


「フハハハハ!! どうだ宇宙をどう倒す? 正直今の私は帝王より強いぞ!!」


「確かに俺だけじゃあ厳しいかもな。だが忘れるな。ブラックだけがホールじゃないぜ!!」


「わけのわからんことを……このまま捻り潰してくれるわ!」


「待てい!!」


 黒が支配する空間に、赤い渦が待ったをかける。


「な、なんだあれは!?」


「赤き血潮は正義の印、レッドホール!」


 さらに続々とカラフルなホールが登場する。


「ブルーホール!」


「イエローホール!」


「ピンクホール!」


「グリーンホール!」


「そして俺がマサキだ!」


「五人揃って! ゴレンホール!!」


 カラフルな爆発を背に、しっかりとポーズを決めた。


「違う! ブラックホールとはそういうことではない!!」


「知らんな!!」


「みんなの力をマサキに集めるんだ!」


「ええ、よくってよ」


「やってやりましょうぜ!!」


「みんな……いつもありがとう!」


「いつも!? 貴様らいつもそんな感じか!?」


 五色の力が集まれば、俺の力は百万倍だ。反撃開始といこうか。


「正義をこの手に!!」


 俺の手に五色の光が集まり、ブラックホールの世界を彩っていく。


「うっ、うああ! 侵食されているだと!?」


「この世界はお前自身だと言ったな? ならば喰らえ! 赤いハバネロ!!」


 宇宙に大きく赤いハバネロの絵を描く。

 じわじわと黒を赤が侵食していくのだ。


「うがっ!? があああぁぁぁ!? 何だこの辛さは!!」


「辛いのは嫌いか? ならグリーンホール! グリーンなのに青汁攻撃じゃああああい!!」


 グリーンで盛大に青汁をぶっかけ、黒をさらに塗り潰す。


「辛っ!? 苦い!! なんだこのまずい汁はああぁぁ!?」


「黄色といえばカレー! カレーは飲み物! どんどん追加じゃあい!!」


 本場バターチキンカレーを追加で描いていく。

 味は保証するが、辛さで舌がもつかは保証できんぜ。


「味が! 味が混ざって! うげええぇぇ! 不快な味にしかならん!!」


「ここで桃を追加! ほんのり甘い乙女に人気のフレーバーだ!」


「辛すぎてそんな些細な味がわかるかあああぁぁ!!」


 人がせっかく味を変えてやったというのに不届き者め。

 ならば最後だ。すべてを水に流してやる。


「いくぞブルーホール!! ブラックホールなんぞ水に流してしまえ!!」


 大竜巻が発生し、激しい雷雨が暗闇を洗い流していく。


「やめろ! やめろおおぉぉ!! 舌が! 口が痛い!!」


「ちなみに塩水だ」


「あああぁぁぁ!! 空間が! ブラックホールが破壊される!」


「必殺異世界チート!!」


 最後の仕上げだ。俺の右手に集いし五色の光が、暗闇に染まった世界を完全に破壊する。


「雰囲気で喋ってるけど、ブラックホールが何かよく知りません!!」


 知らないものは消してしまおう。調べるのが面倒だからな。


「こんな……こんな一方的に……ありえん! ドグレサ帝国よ、永遠なれえええええぇぇえぇ!!」


「やれやれ、ちょいと長風呂しちまったな」


 崩壊する暗黒空間からあがり、さっぱりしたところで牛乳を一気に飲み干した。


『なんか敵がかわいそうでしたね』


「悪の帝国に慈悲はない」


『はいはい、じゃあ戻ってきてください』


『お疲れ様でした、マサキ様』


 さっさとゲートから二人のもとへ帰った。

 地獄軍師サンパー。なかなかに強敵だったぜ。


「敵もかなり強くなっているな」


「正直驚きました。まだ温存している戦力はあるはずです」


「暗黒博士と冥府大将軍という最後の砦がいると聞いたことがあるわ」


「まだまだ戦いは続くな。安全に乗り切るためにも、神器とやらを完成させないと」


「まずはゆっくり休んでください。明日まで完成はしないのですから」


 ユカリの言う通りだ。今は少しでも体を休めておくべきかもしれない。

 これから始まるであろう激戦に備え、俺たちは眠りにつくことにした。

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