メインヒロインが多いのは仕様ですか?

【メインヒロインが多いのは仕様ですか? あらすじ】


僕はごく一般的な高校二年生。だが、ひとつだけ困った『体質』を持っている。それは、『ヒロインひきよせ体質』だ。これを聞くと、「モテ自慢乙」という奴もいるかもしれないが、そんな簡単な話じゃない。ヒロインというものは、いつだってトラブルと一緒にやってくるものなのだ。早速、異世界から魔王がヒロインとしてやってきて……?

魔王に幼なじみ、生徒会長に美人教師!? ヒロインズに振り回される幸せなようでそうでもない(?)青春ラブコメ、堂々開幕!




【メインヒロインが多いのは仕様ですか? 試し読み】


「異世界からやってきた魔王だ! よろしくたのむ!」

 転校生は元気よくそう言った。

 燃えるように真っ赤な長い髪と、髪の間から伸びた角。それとは不似合いに顔はあどけなあった。背も低いし、コスプレした女子中学生と言われても納得してしまいそうだ。

「あー、ま、魔王さんはどこの席に座ってもらおうかな……」

 担任の先生も、どう突っ込んでいいのか困っているらしく、目が泳いでいる。そのフラフラと泳ぐ目と、僕の目が合ってしまった。

 まずい。

 先生は僕を見てうなずき、こう言った。

「そうだ! ちょうど空いているし、彼の隣に座ってもらおうか!」

「くるしうない!」

 にっこり笑顔でそう答えた自称魔王は、赤い髪を揺らしながら小走りに僕の隣に座った。

「うわー! これこれ! 本で読んで、この世界の学校に憧れていたのだ! 本当にこんなおしりが痛くなりそうな椅子で勉学をするのだな!」

 そしてそのまま、こちらに机をくっつけて言った。

「学友、今日からよろしくな! ところで、わらわに教科書をみせてくれ。手に入れるのが間に合わなくてな」

 自称魔王は興奮した様子で言った。本当に魔王なのかはともかく、転校してきたのがよほど嬉しいのだろう。ちょっと変わっているけど、悪い子じゃなさそうだ。

 そう思った瞬間、赤い髪からふわっとこの世のものとは思えないいい匂いがした。机をくっつけたこともあり、彼女と僕の間の距離はわずか数センチほどになっていた。ドキッとし、改めて隣の自称魔王を見る。

「ん? どうしたのだ?」

 嬉しそうに笑う瞳は大きなアーモンドのようで、髪と同じ赤色をしていた。よく見ると無邪気な表情が幼く見せているだけで、顔立ち自体は美しく整っていて、どこか高貴さすら感じさせる。

「あ! いや、なんでもない」

 照れた僕は、話を変えようと質問をした。

「と、ところで魔王って、本当に異世界とかから来た魔王なの?」

 冗談のつもりで聞いたのだが、これが失敗だった。

「そうだぞ! 論より証拠という言葉もあるし、自己紹介がてら見せてやろう」

 そう言って立ち上がった魔王は、僕らには聞き取れない言葉を口にしてから、両手を窓の方に向けた。

 その瞬間、昼間にも関わらず外が突如真っ暗になり、稲妻とともに真っ赤なドラゴンが雲を裂いて現れた!

「わらわのお気に入り召喚獣だ。ペットとは言え、家族同然だと思っている。わらわともども仲良くしてくれ!」

 にっこり笑ってそう言う魔王に、僕も、先生も、クラスメイトも、無言でコクコクうなずくしかなかった。

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