憑きのお椀

私はあれが欲しかったのです。

お椀に溜まった雨漏りの水に浮かぶ月のような電球の色の卵の黄身。

あれを私に塗りたくってあなたに抱かれたかった。だから毎日私は一糸纏わず食事を作り、ただ舐めまわされるためだけにわざとコーンスープを体にこぼし、赤子や犬のフリをしてあなたを一日中でも舐め回して居たかったのです。


全てはあなたと私の情念のため、私はこのあばら家を終の住処にしたかったのです。あなたを蛇のように絡み窒息させたかった。そして殺して欲しかった。いえ、殺したいと思うほどに強く強く憎んで、それだけ強く愛して欲しかったのです。


今は1人。縁側で、お椀の中に溜まった二重の卵の黄身を見つめている。黄身はやがてお椀いっぱいに広がり、溢れ出て、私の中からも何もかもの液体を溢れさせてくれるあなたが居なくなり、私は1人で雨を降らして居ます。

お椀いっぱいの雨が溢れて

黄色いお月様が空にしかないのが物足りない。


私のお腹の中にそのお月様を下さい。

きっとそれは私の中にぴったりと合うはず。

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