第四項 褒め上手になれずとも褒め下手になるな

 褒めるのが上手な人がいます。

 褒めるという行動一つを論じるだけで、本が一冊書けるくらい奥が深い物らしいです。


 ですが、著者はそこまで深く考えてはいません。

 間違いさえ起こさなければ、気軽に褒めればいいと思います。


 ではその間違いとは何か。


 よくある間違いとして、その人を褒める時に「甘やかしているだけ」や「もてはやしているだけ」になっている褒め方です。

 会社という組織にあって、これは非常に害悪です。妙に甘やかして無理の効かない人材に育てても意味がありませんし、その社員にとってもいい事はありません。


 才能や個性を褒めてやる気を出させる。

 これは止めましょう。褒め上手ではない人がこれをやると、失敗します。

 そんな事でやる気は出ませんし、才能や個性が褒められるに値する事など本人がよく分かっています。これは上級者向けです。

 これを自然と出来るようになったら、モテます。たぶん。


 褒め上手という自覚がない人は、ちょっとした行動を褒めましょう。

 何気ない日常業務の取り組み方や、上手くいった成果を褒め、モチベーションの低下を防ぐ。

 これに取り組んでください。


 いい気分にさせようとか、褒められたと思ってもらおうとか、そこまでしようと考え込むから変な感じになるのです。


 言うなれば「そんな事でいいの?」と思うような小さな褒め。

 これを言えるようになれば、少なくとも褒め下手にはなりません。


 気の利いた誉め言葉なんて不要なのです。

 出来る人はやったらいいと思いますが、出来ない人がそれをやろうとするといらぬ誤解を招いたりします。


 極意は「有難う+oneありがとうプラスワン」です。


 実例を少し。


 例えば、来客の対応にお茶を持って来てくれたら。


「有難う」


 だけではなく。


「有難う、気が利くね」


 そう褒めてください。

 お茶を出すのはマニュアルで決まっている業務なので、気が利くもクソもないわけですが、そう褒めてください。



 コピーを取ってくれたら。


「有難う」


 だけではなく。


「有難う、助かるよ」


 そう褒めてください。

 コピーを上司に頼まれたらそれをやるのが仕事なので、助けてるわけでも何でもないわけですが、そう褒めてください。


 その程度でいいのです。

 わざわざ血眼になって褒める所を探さなくても、褒める材料などそこら中に転がっています。

 喜んでもらおうだなんて思わず、肩意地を張らず、軽い気持ちで取り組んでください。



 そもそもモチベーションなど、くだらない事で上がったり下がったりするものです。

 給料日には上がり、寝不足で下がり、金曜の夕方には上がり、日曜の夜には下がり、明日から三連休だと上がり、連休最終日には下がり、連休明けに出社したら意外と少し上がり、上司に小言を言われて下がり、ランチが美味しかったので上がる。


 そんな感じで日々上がったり下がったりしているそれを、コントロールしようとする事自体が間違っている。


 地球各地で発生する自然現象と同じです。

 言うなれば人間も自然の一部ですから、その人間の心持など自然現象。

 人間の力でコントロールできるはずもない。


 それくらい割り切って考えてみては如何でしょう。

 そうなると、自然と答えに辿り着きます。


 これ以上悪化させないよう、温暖化防止に向けて地球規模で動いています。

 会社も、社員のやる気の低下防止に向けて、全社規模で動けばいい。


 砂漠に木を植えるよりも、二酸化炭素の排出量を減らす方が簡単なはずです。

 社員にやる気を植えるよりも、不満の増加を抑制する方が簡単なはずです。

 良くしよう、ではなく。

 悪くしない、を考える。


 それが結果として良い方へ向かうのです。


 なのでまずは、褒める。


 才能や個性ではなく、行動や結果を褒める。


 褒める所は、探す。

 そこら中に転がっています。才能や個性を褒めるよりもよほど簡単です。


 そして見つけて探してでも褒めて、モチベーションの低下を抑制する。

 対象の成長を促すのであれば、必須事項と言えるかもしれません。



 さて次回は、部下になる才能をひとつご紹介します。

 更新は週末になる予定です。

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