モチベーションは自然現象と同じと思え
第三項 上げるのではなく下げない
ならぬ堪忍するが堪忍。
そんな言葉がありますが、社員教育で大切なのはこれに似ています。
褒める所が無いのであれば、探してでも褒めるべき。
山本五十六の名言にもある通り褒めなければ人は伸びないわけですが、そもそも褒める所が無い、探しても見つからない、と言う人がいます。
そんな時は『ならぬ堪忍するが堪忍』を思い出しましょう。
探して無いを見つけるが探す。
以前、とある経営者さんが仰っていた言葉を紹介します。
「今年の新入社員、遅刻も欠勤もないし残業にも文句は言わないんだけど。なんだかやる気が感じられなくて困っているんですよ」
なるほどなるほど、よく聞くお言葉です。
気づいていませんが褒めてますよね。無遅刻無欠勤で残業命令にも文句を言わない。そう褒めてらっしゃるわけで。
そうであるにも関わらず、やる気が感じられなくて困っていると言う。
これ、全面的に間違っています。
やる気が無かったら来ませんよ。
遅刻も頻繁にするでしょうし、月に一回は風邪をひいて、お腹痛くて、頭が痛くて、他にも様々な理由を付けて休むでしょう。
時間通りに出社し、残業命令にも文句を言わず、特段急な休みを取る事も無い。
そうであるならば、それは「やる気がある」と思うべきです。
これが「褒める所を探す」という行為です。気付いているのですから、あとちょっとで見つけられるはずなのです。
仕事の成果が上がらないのは上司の問題です。やる気とは別の問題です。
「こんな簡単な事も出来ないんですよ。流石に困りました」
と、小学生でも出来そうな雑務が熟せなかったという愚痴も聞きました。
ですがそれ、言い方を変えればこうなります。
『新入社員にこんな簡単な事さえやらせることが出来ない、無能な上司なんですよ私』
なんと恥ずかしい事か。
更にはこんな事も言っていました。
「褒める所が全く見当たらないんですよね。社会人として評価に値する事が何一つない」
無遅刻無欠勤の新入社員にそこまで言いますかね。
言い方を変えればこうなります。
『無遅刻無欠勤の新入社員と接しているが、褒めるところ一つさえも見つけてあげられない無能な上司なんですよ私は』
ああ恥ずかしや。
確かにその通り。今すぐ教育から離れてしまうべきです。
会社にも、新入社員にも、良い事は一つもありません。
お互い無駄です。
よく「社員のモチベーションを上げる」という事を言うコンサルタントがいますが、著者に言わせればそれは幻想です。
上司や会社が発信した影響力を以て従業員のモチベーションを上げるのは、容易なことではありません。むしろ不可能だと思っていい、とさえ考えています。
それは、多数いる従業員のモチベーションの元になっているものが、正しく十人十色であるからです。
短期的な経済的対価を第一に求める者。
長期的な経済的対価を第一に求める者。
やり甲斐を第一に求める者。
私生活の時間を第一に求める者。
名誉を第一に求める者。
そもそも働く理由、働いている理由が其々に違うわけです。
その人が何故、その会社で働き続けているのか、その理由さえも其々に違うわけです。それを十把一絡げに何かでモチベーションを上げようなど、
中にはそれでモチベーションを上げてくれる社員もいるでしょう。
ですが上司や会社の影響力でモチベーションを上げてくれるような社員は、既にそういった種類の問題とは別次元にいる社員であり、そうではない社員とは区別して考えるべき存在です。
勿論、報酬などで一時的な熱量を引き出す事は可能でしょうが、長期的にそれを続ければ同じ報酬で同じ熱量は引き出せなくなっていきます。
逆に、上司や会社が部下や社員のモチベーションを下げるのは簡単です。
実に簡単で、恐らく頻発している事象であると言い切って差し支えがないと思われます。
まずは「モチベーションを上げる」という発想を捨て、どうやって「モチベーションを下げないか」を考えてみる。
怒られてばかりでは下がってしまうので、たまには褒めてあげて下さい。
勘違いしてはならないのは、褒める事でモチベーションが上げるのではありません。褒める事で、モチベーションの低下を防ぐのです。
そう思って褒めるのであれば、無理な褒めや間違った褒めは無くなります。
上げよう上げようと思うからこそ、どうやって褒めたらいいのか迷う。
上げよう上げようと思うからこそ、相手が何を褒めてもらいたいのかという、考えても答えの出ない迷路に迷い込む。
その結果、トンチンカンな誉め言葉で逆効果を生んだりするのです。
ではどう褒めるのか。
それは次のページへ。
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