「光」 あなたの傍に ~極光王国奇譚~

『ねえ、あれが欲しいわ』

 小さな手が指し示す先には、光る粒が詰まった小瓶。なんでも《極光の魔女》の新商品らしい。

「こんなの買ってどうするつもりだ」

『これがあれば、夜でも傍にいられるじゃない』

 光の精は闇の中で存在することが出来ない。裏を返せば、光源さえあればいいわけだ。

「ずっと傍にいる気か」

『そうよ、いけない?』

 ぷんすか怒る彼女を宥めつつ、財布を取り出す。

「一つくれ」

「まいど! 後で感想を聞かせてくださいね、光の乙女」

 どうやら精霊が見えているらしい売り子の商魂逞しさに、思わず苦笑を漏らす。

「いっそ『光の精ご用達』と謳ったら売れるんじゃないか」

『ちょっとお! 私の素敵な思いつきを金儲けに使わないでよ!』

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