第54話 フォースが足りなかったのか(以下略)
「私が常識派であなたがおかしいというか、フィクション界の住人なんだよ」と夫にゆわれた。私よりマンガみたいな人に言われたくないという解せぬ気持ちのままの連休が始まった。そして気付いたら連休が終わっていた。
連休前の事だ。
「おくさん、Fleshな店に連れてってくださーい。」とさみしんぼアメリカ人のJ…もといアンソニー(仮名)に頼まれ連れていくことにした。2人きりだと間が持たなそうだったので他に誰か行きたい人はいないのかと確認したところ、近所の大学生が名乗りを上げた。マダムは車のマフラーが途中から折れたため今回は休みだ。
なぜアンソニーになったかというと、若干のケツ顎と背の低さを除きアンソニー・パーキンスに似ているからだ。なお命名はマダム。
彼らを連れて行った日は生憎の雨で…もとい嫌が応にも雰囲気を高めてくれちゃう感じの天気だった。というか、バケツをひっくり返したレベルの雨で濡れながら店に到着し店主に残念な顔をされたところから始まった。
なんだよこのアメリカンホラー的な始まり方。ネタかよ。
Fleshな店は相変わらずのホラーテイストで、陰の極みのようなオーラを醸し出していて近所の大学生は震えていたが、アンソニーのお陰でだいぶ中和されていた。
陽気なアメリカンすげぇ。
ホラー要素に全く動じないアンソニーに気を良くした店主がこれはどうかと、どこからともなく持ってきた切腹パフォーマンス写真で大学生は泣きそうになってギブアップ寸前になっていた。ハリウッドホラーにありがちなアジア人まっさきに死亡説は嘘ではなかった。
ちなみにアンソニーは(その中に一緒に入っていた)ハンドメイドエロ写真集(素人)にうろたえていた。
そんな彼らのリアクションが思いの外よかったため、店主がちょー嬉しくなって色々出してきたがここには書けないので詳細は割愛する。(私は1回既に見ているので耐性がついている)
アンソニーはその後何をテンパったのか夜中の通販番組のようなノリで全てのものをスターウォーズで例えてくれたけれど、私も大学生もフォースが足りなかったのかあんまりよくわからなかった。
最後、店主にそういえばどこで仕入れたのこれ…と聞くと、相変わらず穏やかな笑顔で「秘密です」と言ってくれた。
実は店主が一番のホラーかもしれない。
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