第41話 無視して避けてるから

実家から家に戻るときに航空券の手配を1日間違えており追加で5万ほど飛んだので、心の傷を癒していた。笑って許してくれた夫に感謝しつつ、弄りを甘んじて受け入れるしかない。せつない。

九州に戻ってきてポストにドバっと溜まっていた年賀はがきの返事を書き終わり、やっと新年が始まった気がする。


この年になって夫と夫の師匠と汚旨い安酒場でオールしたり、甥っ子(1)を囲むお年始会をしたり、夫が過去に箱根駅伝の予選会に出ていたことが発覚したり、母のカレー(手加減版)が出たりと、炭水化物と肉オンリーで作られた松花堂弁当のような年末年始だった。


その中でも一番濃かったのは夫の師匠との飲み会だったので、今回は夫の師匠について書くことにしよう。


夫の師匠…一体どこから書けばいいのだろうか。

大学時代の恩師という意味なのだが、勿論夫の師匠なのでポテンシャルの高さは抜群だ。空手で黒帯だったり、3.11の時に夫宛に地震の原因はユダヤの陰謀だと送ってきたり、学生時代にうさんくさいビジネス書を書いて出版したり、ゼミの合宿で飲み過ぎて宿を出禁になったりとエピソードの多さは群を抜いてトップかもしらん…。


ちなみに何かあるたびに師匠は奥さんへの言い訳として夫を使うらしく、(夫は)師匠の家を出禁にされてしまったそうだ。かわいそうに。


ユダヤの陰謀説に食いつく師匠はムー民だ。夢があっていいじゃないか。

仲間ができたようで嬉しくなって師匠に絡んでいたら、師匠がムー民な理由を教えてくれた。


霊感が、あるのだ。


「そ、それ…山とか海とか心霊スポットとか大丈夫でしたか?」

私は幽霊等は見えないのだが異様に勘が鋭いことがあり、ドライブなどで友達や知り合いの車に乗ると走行中に変な寒気を感じたりすることがある。

そういう時「この道なんか嫌」と避けて通って貰ったりして、後から「そこ地元で心霊スポットと言われてるんだけど、教えてないのによくわかったね。」と言われる。


「あー、大丈夫大丈夫、無視して避けてるから。」


はい!?

余裕しゃくしゃくの返事とともに師匠の口から出た次の言葉は

「今のうちの周り、防空壕いっぱいだし。」


うん…それ(以下略)


なんかさー、一軒家なんだけど家の中にカビの臭いが取れないんだよねー。

とコーヒー焼酎をぐいっとあおる師匠に、その霊感をもっと別のところに使えばいいのに…!と心の中で突っ込みを入れながら、「さみしんぼは一軒家なんか借りちゃダメだよ!」と返事をするのが精いっぱいだった。



今年もよろしくお願いします。

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