第40話 何かあった時に便利だから

クリスマスはケーキとかローストビーフとかいろいろ作ってはみたものの、サンタが夫宛に風邪を持ってきて終わった。そんな私たちは明日から私の実家(札幌)に帰省することになっている。さっき北海道は今日から大寒波が来るので注意ってニュースで出てたけど、飛べるのかこれ…ってあれ?なんかこの感じ、新婚旅行と既に同じ臭いしかしない…!


とか書いているが、途中まで書いて塩漬けにしておいたため、今は実家に無事辿り着いている。


クリスマスといえばサンタだ。サンタといえば先日、アグレッシブ70代マダムの家を片づけてきた。イベントで会った時に「最近車で寝てる時がある」というので理由を聞くと、家が片付いていないからという。

いつもお世話になっているので、私は大掃除を手伝うことにしたのだった。


マダムの口癖は「何かあった時に便利だから」という言葉だ。

私もそのクチで、よく鞄が大きく、そして重くなる。充電器、化粧道具、絆創膏や生理用品、ハンカチやティッシュや手帳や筆記用具、雨具など過去に持っていて1度でも難を逃れたアイテムをお守りのように持ち続けてしまう。女子会での話題も「どのようにしたら鞄が小さくなるか」という話題が5回に1回は出るくらい「あるある」な話だ。そのくらい、女子の鞄の中は性格やその時の気持ちがよく出る。


心配性なマダムの車は、その日一緒にいた関西弁を巧みに使うインド系のシンガポール人から「日本人は綺麗好き言うてたけど嘘やん!」と突っ込みを入れられていた。

上には上がいたのだ。究極形までいくと、入れ物が鞄から車になるようだ。


ここまでで、入る前から既にどのような状態なのかは自ずと分かるだろう。


エレベーターなしの5階にあるマダムの部屋は、扉を開けると床が見えないほどに何かが積み重なっていた。風呂場が段ボールで封鎖されている家を初めて見た。

唯一水回りはキレイだったので理由を聞いたところ、「私は虫とカビだけは大嫌いなの!」と元気な声が返ってきた。虫とカビを嫌うマダムGJ。


マダムお勧めのアイドルソング(最近のやつ)をかけながら5時間ほど粘ってやっと、部屋の一部に地面を出現させたところでその日は作業を終えた。現状維持を約束し帰宅する時に、サンタさんありがとうと感謝された。床を掘り出して通路を作るのがプレゼントだった。可能であれば、虫が出る季節までに全てを終わらせたい。


ちなみに彼女の来年の夢は、家で飲み会とお泊り会をすることらしい。

ぜひ頑張ってほしい。


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