第15話 中華より愛を込めて

前回の話を読んだ夫が、ロシア語だけじゃなくて中国語もやってたもんとか言ってきた。渡中歴長いもんねきみ…。

中国と言えば、私も話があるんだよ。


あれは大学生の頃だ。

選択必修で経済学の授業を取らなくてはいけなかった私は、単位取得が楽という鬼仏表(きぶつひょう:先輩から代々伝わる、単位取得の難易度を書いた表)の情報から

国際経済を選択した。

初回のガイダンスでなぜかメールアドレスを書いて提出をしなくてはいけないという謎のルールがあったのだが、当時は個人情報の管理もユルかったこと、担当の先生が超先生(仮名)というアメリカ帰りの中国人だったことから、「フリーのアドレスだしまぁいいか、皆出しているし。外国人の先生は変わっているなぁ。あはは。」

と特に疑いもせずにアドレスを書いて出してしまった。

だが、それがいけなかった。


ある日、授業アンケートのメールが届いたので、単位数の乏しかった私は、

「あ、この先生めっちゃ真面目だー」と思って返事を返した。

知性も人生経験も乏しかったので、言葉を額面通り取ってしまっていたのだった。

それから味を占めたのか、雑談メールがやたら届くようになってしまった。

止めておけばいいのに、当時の私は真面目に毎回返信をしていた。

今戻れるのならば、高田純次ばりのテキトーさを発揮したメッセージを返して

ラリーを強制終了させてられてたんじゃないかと悔やまれてならない。

雑談にもまともに返事をしていたら、脈ありだと思ったのか

そのうちエスカレートしてきた。

どうして脈ありだと彼が判断したのかは今でも謎過ぎてならない。

アメリカ仕込みのポジティブシンキングってやつなんだろうか。

他にも色々エピソードはあったのだが、本筋から外れるので割愛する。

「一緒に夜景を見に行こう」とか「ご飯一緒にいこうよ、二人で」とか

「夢で君を見たよ」とかなんかアレなメッセージがどんどん混ざるようになってきて

大変に怖くなったので、当時の私はメールを拒否設定にしたのだった。

だが、それもいけなかった。


メールを着拒にして1か月程度経った日のことだった。

「なんか気持ち悪いサンタの絵を描いたクリスマスカードが届いたんだけど、英語の。」と母が言いながら私に手渡してきた。

キモい笑顔のサンタ(?)の絵と共に、

Dear私ちゃん メリークリスマス♡と書いてあった。勘弁してくれ。

差出人の名前はなかったが、超先生(仮名)からだと確信した私は

問答無用でお焚き上げに持って行ったのだった。

キモさと同時に、なぜ教えてもいない住所がわかったのだろうかという疑問も沸いた。個人情報保護法の制定前だったから、きっと教務が教えたのだろう、教務ェ…。

今だったら訴えて貰うもの貰ってるぜ!

物理的にモノが届くよりも、電子で届いているのをガン無視するほうがいいや。

全力で心が折れていた二十歳の私は泣きながら着拒を解いたのだった。


まさかその後7年間ほど、愛のメッセージ(笑)が届き続けることになるとは

当時の私は予測できなかった。


あ、今は来てないよ!

もう15年経つから、きっと誰か見つけたのでしょう。きっと。多分。

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