青のチケット

バスを待ってから数時間が経った


長時間座りすぎたため、尾てい骨がジンジン痛む


ストレッチがてら、体でも動かそうと思いバス停の小屋から出てみるが

照りつける日差しが思ったより暑く

またベンチへと戻る



日影のあるところないところでは

こんなにも差があるのかと影の偉大さに感心し、再び腰を下ろす


時が止まったかのようなベンチもえらく年季が入っており

背もたれには、どこのメーカーかわからない牛乳の広告がされていた


かろうじて、電話番号がみえるが他の文字は汚れで消えている


同じように近くにあった年季の入った時刻表にも目をやるが

何度見直しても次のバスまで40分もある


最初は、段を読み間違えたのかと思ったが

3時間に1本という都会人殺しのタイムテーブルだった


田舎とは恐ろしい


携帯をあえて家に置き

何か新しい発見があるのではと、大阪からはるばる青春18切符で鈍行で乗り継いできたのだが

やはり無謀な挑戦だったか


現代人には携帯が必要なのだなあと

呟いていると


あぜ道の近くに女性が立っていることに気づいた


絵に描いたような、カンカン帽子を深く被り

空色のワンピースからは、透き通るような白い腕がでている


近くの自販機で買ったバヤリースオレンジの缶を行儀よく両手でにぎっており

目の前に広がる快晴の空とのコントラストが

よく効いた緑々しい田んぼをボーっと見つめている


隙間を埋めつくした稲達を扇ぐように

夏風がさっと吹き

彼女の長い髪を揺らす


コロンだろうか、レモンのような柑橘類の爽やかな匂いが私の鼻をかすめた




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