四章 玉藻さん、お迎えが来ましたよ(死にません

10 ローブを着た不思議な人がうちに来ました

師匠から箒をもらって、次の日のこと。

私は、朝食の準備が終わり箒の手入れをしていた。

師匠は…まだ自分の部屋で寝ているのだろう。

「はぁ…師匠起こしに行かなきゃ…」

と、私が椅子から立ち上がったとき

コンコン、とドアを叩く音がした。

「お客さんかな?はーい」

ガチャとドアを開けると、そこにはボロボロのローブを着た明らかに怪しい人物がいた。

…私は、無言でドアを閉めた。

「おい、ちょっと待て。閉めることはないだろ」

「で、なんの用ですか?」

「あぁ、ちょっとローリスさんに話があってな…」

と、私が怪しい人物と話をしていると

「ふぁぁぁぁぁ…こんな朝早くからなにしてんのさ、クエル…って、その危なそうな人誰?」

「丁度良かった。ローリスさん、ここに玉藻前様は来なかったか?」

この子、玉藻さんのことを探しているのかな?

「その声は…あぁ、玉藻のところのガブリィか。玉藻なら部屋にいるよ、ちょっと待ってて起こしてくるから」

そう言うと、師匠は部屋に戻っていった。

「あ、あのどうぞ座って待っててください。お茶持ってきますから」

「あぁ、お構いなく」

そう言うと、彼女はボロボロのローブを脱いだ。

濃紺のツヤツヤしたロングの髪にぴょこんと立っている狼のような耳。

どうやら、彼女は狼牙族ろうがぞくのようだ。

(あ、普通に喋れるんだ…あれが素だと思ってた…)

「もちろん、喋れますよ。こちらの方が楽ですし」

え?いや、あの…

「私、何も喋ってないんだけど?」

「あぁ、僕は人の心というか考えていることが読めるんですよ」

えぇ、なにそれ…反則でしょ…あと、この人僕っ娘なんだ。

「それでも、僕にも見えない・・・・部分はあります。自分の中で無意識に記憶に鍵をかけている部分や、私より魔力の強い人などの考えはあまり分かりません」

(実際には、この人の心も読めてないんですけどね…)

私たちがそんな話をしていると、師匠が玉藻さんを連れてきた。

「うぇ…少し飲みすぎたのじゃ…」

「そりゃそうだよ、あんなに度数の高いお酒を…何本も空にするんだから」

どうやら、二人は部屋で朝まで飲んでいたらしい。

「玉藻さん、座っててください。今お茶持ってきますから」

「悪いのう…濃いやつを頼むぞ」

「まったく、あれほど飲みすぎないようにと言ったのに…」

「うぅ…面目ないのじゃ…」

「はい、酔い醒まし用の薬。それ飲めば楽になる…と思うから」

そう言うと、師匠は濃い緑色のドロドロしたものをもってきた。

(効果不明!?そんなもの出しちゃダメなんじゃ…)

「すまんのう、ローリスよ。では、さっそく…」

玉藻さんは躊躇ためらいなく、コップの中のものを飲み干した。

「ローリス…もう一杯貰えるか?」

(…え?)

「…すみません、玉藻前様はあの…味覚がちょっとアレ《・・》なので…」

と、ガブリィさんが耳打ちしてくれた。

どうやら、玉藻さんは苦いものが好きなようだ。

「さて、そろそろ帰るかの。二度も泊めてもらって悪かったの、ローリス」

「今度は是非、魔界こちらにも泊まりに来てください。歓迎しますよ」

「あはは、今はいいかな…」

なんか、料理とか苦いものや辛いものばかり出てきそうだし…

そして、玉藻さんたちは帰っていった。

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