9 楽しいひととき
そして、数分後…
「これでどうかな?多分、今のクエルにぴったりなヤツになってると思うよ」
「そういえば、この箒って師匠が作ったんですか?」
しっかりと手に馴染む感覚、そしてどこか使い手のことを考えて作られている感じがすごく心地よかった。
「まぁね、大事な弟子のためのものだから」
(あれ、倉庫に眠ってたやつなんだけど…バレなくてよかったー。二百年前まで使ってたお古なんだけどなぁ…まぁ、いっか)
「じゃあもう一回、乗ってみなよ。あ、地面を蹴った後は箒の柄をしっかり握って、重心を一定に保つ感じね。そうしないと落ちちゃうから。あとは、自分の身体の中を回っている魔力を箒に注ぎ込む感じでね」
「分かりました、やってみます!」
そして、私はまた地面を蹴った。
ふわっ という心地よい浮遊感が続く。
その時、私は紛れもなく浮いていた。
でも、
「…師匠、これってどうやって進むんですか?」
「え?前に進めない?うーん…それは練習するしかないんじゃない?とりあえず、今は浮くことが出来ただけでもすごいよ」
師匠に聞いてみると、調整をしたとはいえ一日で浮くことが出来るようになるのはすごい事らしい。
「さ、今夜は記念のパーティーかな?せっかくだから玉藻も呼ぼうか。おめでとうのパーティーが
二人だけじゃ味気無いしね」
そう言うと、師匠はダブダブのローブのポケットから碧色の
「あ、もしもしー。玉藻って、まだ帝都にいるよね?今日パーティーやるからうちに来てよ。ほいほい、それじゃあまた後でねー」
「ふぅ、玉藻さんも来るならしっかり料理しなきゃいけませんね」
「そうだねー、足りない分はクラウの村で買ってくればいいかな?」
「……師匠は、行かなくていいです。いつも余計なもの買ってくるんですから」
ぷくーっと膨れている師匠を置いて、私は村まで買い物に行きました。
「師匠って、どっちかと言うと妹って感じだなぁ…ふふっ、可愛い
その晩は、師匠が好きな甘めの味付けにした料理がテーブルいっぱいに並びました。
「…のう、クエル。この料理ちと甘いんじゃが…」
「あ、そこに森で取ってきた薬草で作ったスパイスがありますから。お好みでそれかけてください」
「えー、玉藻。こんなに美味しいのにそんな辛いものかけるのー?」
(まぁ、師匠は辛いものダメですからね…)
「ではでは、改めまして。クエルおめでとー!」
中にお酒の入ったグラスで乾杯がされた。
そんなほろ酔い気分の中、ささやかなパーティーは進んでいった。
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