8 箒に乗ってみます


次の日、私が起きてリビングに出てくると…

「ふぁぁ…あれ?師匠、おはようございます。今日は早いですね」

「あ、クエルおはよう。今日から始めるよ」

始めるってなにを…

「なんでキョトンとした顔してるの?言ったでしょ、練習するよって」

「あぁ、そうでしたね。ではさっそく…」

私が言いかけたところで、師匠のお腹からぐぅぅぅぅーと、気の抜けた音が響いてきた。

「そ、その前にまずごはん…作って…」

「はいはい、ちょっと待っててくださいね」

私はマルマルの卵を使ったオムレツを作ると、椅子にちょこんと座っている師匠の元へ持っていった。お人形みたいですごく可愛いです。

「やっぱり、クエルのご飯は美味しいねー」

無邪気な笑顔を私に向けながら、師匠は着々と食べ進めていた。

(これで五百歳…なのかぁ…)

師匠というより、妹みたいな感じです。

程なくして、師匠が食べ終わった。

「ごちそうさまでしたっと…それじゃ、おやすみー」

「って、ちょっと待ってくださいよ!箒に乗る練習は!?」

私は、ソファーにごろ寝している師匠に聞いた。

「あー…そんな話してたような…してないような…」

「してましたよ!さぁ、早くやりましょう?」

私は、渋る師匠を無理やり外へ引っ張って行った。

「まず、乗ってみな。それで使えたら終わり、無理だったらみっちり修行。それでいいでしょ?」

と、気怠げに言ってきた。さっきまでの勢いはどこへいったのか…

「…で、肝心の箒はどこですか?」

私は当たりを見回したが、箒はどこにも無かった。

「ふっふっふ、それはねぇー…」

師匠が指を鳴らした瞬間、虚空から一本の箒が現れた。

「それ、普通に持ってきた方が早いですよね?」

「だって、こっちの方がカッコイイじゃん!そんな事いいから、とりあえず乗ってみてよ」

私は、師匠に言われるままに箒に跨った。

「でね、そのまま地面を思いっきり蹴ると飛べるよ…たぶん」

私は、言われた通りに思いっきり地面を蹴った。

少しだけふわっとした浮遊感が体全体を包んだが、すぐに地面についてしまった。

「ふむぅ…魔力制御はオッケーっと。あとは、魔力の循環に少しだけ違和感あり…か」

なんだか師匠が難しい顔をしていたので、ついからかいたくなってしまい私は、

「師匠が考えことしてるなんて…珍しいですね」

と言ってしまった。

「んなっ!そんなことないよ!私だって、たまには考え事ぐらいするんだからね!」

(あ、自分でたまにはって言っちゃうんだ…)

「とにかく!その箒貸して、少しだけ調節してくるから!」

そう言うと、家の中に戻ってしまった。

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