6 玉藻さんが泊まっていくそうです
その日の晩ご飯は、玉藻さんが作ってくれました。
「ほれ、クエル。ローリス、美味しくできたぞ」
そう言いながら出てきたのは、真っ赤な色をしたスープでした。なんでも、魔族の伝統料理らしい。
「こ、これって…明らかにヤバイやつだよね?食べたら意識が無くなるとかそういうやつだよね?」
ガラにもなく、師匠は
「何を言っておるのじゃ?このくらいで死にはせんぞ。なんたって、昼間に訪れた森に生えていたファイヤーペッパーの葉に途中で捕獲したレッドドレイクの肉、あとは隠し味にカエンダケを入れたスープじゃからな」
………それ、全部混ぜて食べていいものじゃないですよ。全部辛さが尋常じゃないやつですよ…
「ね、ねぇクエル。私、お腹痛いからご飯はパスするね…」
と言って、逃げようとする師匠の腕を掴み
「師匠、一人だけ逃げるなんてずるいですよ。
私は笑顔で言った。
「ほれ、ローリスも沢山食べて大きくなるんじゃぞ」
「いや、玉藻は私がこの姿から大きくならないって知ってるでしょ!」
こうして師匠も、嫌々ながら食べさせられていました。
「うぅ…こんなの拷問だよぉ…」
「全く…人がせっかく作ったものを拷問と言うなんて、酷すぎるぞローリス」
と、ニヤニヤしながら言っている玉藻さんは本当に生き生きしていました。
「口の中が燃えてるよぉ……痛い、痛すぎる…」
「まぁまぁ、師匠。口直しにお酒でも飲んだらどうですか?」
私は、師匠にお酒の入ったコップを手渡した。
「おー、クエルが珍しいね。どうしたの?」
失礼な。私は師匠の健康を考えてるんですよ。
「いや、私も少し飲みたくなって…」
と、濁して答えた。
「では、ローリスとの再開とクエルとの出会いを祝して、乾杯っ!」
「「かんぱーい!」」
そうして、私たちは賑やかな夜を過ごしていきました。
「もう…だめれす……飲めましぇん…」
「ほーらー、クエルー。ちゃんとベットで寝ないと風邪ひくよぉー?」
そう言って、抱き抱えてくれた師匠の腕の中はすごく安心しました。
でも、身長が私の腰ぐらいまでしかないのによく持ち上げられたなぁ、と思います。
私がダウンした後も、師匠と玉藻さんは朝まで飲んでいました。
次の日、私が起きる前に玉藻さんは帝都へ向けて出発しました。なんでも、少し用があるとかで…しばらくの間、あちらに滞在するそうです。
「そういえば、薬作るの忘れてましたね…」
「まぁ、今からでもいいんじゃない?出来れば、私は寝たいけど…」
と、あくびしながら答える師匠を引き止めて作り方を教えてもらいました。
「うん、初めてにしてはいい出来だね。流石、私の弟子だ!」
「……そうですね、師匠のお陰です。ありがとうございます、師匠」
私は、素直に自分の気持ちを伝えた。
(師匠、これからも頼りにしてますよ)
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