二章 薬草から薬をつくってみます

4 薬の元を探しに行きます

「今日は薬草から薬を作るよー」

唐突に師匠が言ってきた。

(やっと、魔女の弟子らしいことが出来るんだなぁ)

と、私はわくわくしていた。というのも、この一ヶ月家の掃除や洗濯などの家事ばかりでまともに魔女らしいことをしていなかったからだ。

「で、どんな薬を作るんですか?」

「簡単な応急薬を作りたいんだけど…その前にまずは薬草を取ってこないとね。たった今丁度在庫・・・・が切れちゃったんだよねー」

師匠はニコリとした笑顔で言った。

「し、白々しい嘘を…」

絶対残ってるよなぁ…

「まぁまぁ、いいじゃない。これも修行のうちだから、それに私もついて行くからさ」

「はぁ…分かりましたよ。行きましょう、時間もなくなっちゃいますしね」

そこから、私たちは近くの森まで歩いていった。

「はい、じゃあまずは薬草を自分で取ってきて。私も、ほかの場所で取ってるから」

「え?師匠はついてこないんですか?」

てっきり師匠もついてくるもんだと思ってたのに…

「だって、薬草の採集にまでついてったら意味無いじゃん。クエルのための修行なんだからさ」

「分かりましたよ…じゃあ、行ってきますね」

そう言って、 私は森へ向かおうとした。

「あ、そうだ。はい、これ持って行って」

そう言われ渡されたのは、緋色の宝石のようなものがはまっている指輪だった。

「こ、これって…」

もしかして、新手のプロポーズ…なんて変なことを考えていたら、

「それは、通信用の魔術石マナタイトの指輪だよ。どうしたの?顔を真っ赤にして」 「あ、いや何でもないです…」

ですよねー、そんなことないですよねー。

よくよく見てみると、師匠の左手の薬指・・・・・には蒼色の魔術石がはまった指輪があった。

そんな私の心境を知らない師匠は

「あ、後これも渡しておくね」 と、鞘に収まった短剣を手渡してきた。その柄の部分には、古代文字でなにかが掘ってあったが、あいにく読めなかった。

「なにかあったとき用に一本くらい持っておかないと危ないからね。てことで、いってらっしゃい」

「はい!行ってきます!」

私は、優しい師匠の言葉に送られながら森へと向かった。

しかし… 「昼間なのに、森ってこんなに暗いんだなぁ…」

鬱蒼うっそうと茂った葉が太陽の光を遮り、森の中にはじめじめしていた。 私はカンテラに火を付けると薬草を探しながら森の奥へと入っていった。

「ふむふむ、森の奥にはキノコ類が多いのか…あ、こんな所にはニビイログサが」

幸い、師匠から教わった知識のおかげで薬草探しには困らなかった…が、

ガサッ

「きゃー!な、なに!?」

茂みから飛び出してきたのは、小型の牙兎ファングラビットだった。

普通だったらなんの脅威にもならない生き物だが、今の私の目には凶暴な魔獣と変わりなかった。

「ひゃぁぁぁ!来ないでぇ!」

と、腰から抜いた短剣を精一杯振り回すが、一向に当たらない。

すると、私を敵と認識したのかファングラビットはこちらへ牙を向いて襲いかかってきた。

「ぎゃぁぁぁ!やめてー!」

咄嗟に目をつぶり、顔を守るように腕を交差させた。

しかし、一秒二秒経っても牙が私に刺さらない。 恐る恐る目を開けてみると…

目の前には、九本に分かれたもふもふな尻尾があった。

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