3こうして、私たちの日常がやってきた
そこには黒いローブを纏った、ひと目で見て悪い奴だと分かる人が、ドス黒い魔力を放出している魔法陣の前に立っていた。
「君がこんなことをしたのかい?」
内心では怒っていたが、私はつとめて穏やかな調子で聞いた。
「そうだ、と言ったらどうするんだ?」
「消す。肉片も残らないぐらいに消し飛ばしてあげる」
と、私はにこやかな笑みを作って穏やかに告げた。内心はとっくに怒りが爆発していたが。
「そうか、ならこうするまでだ!」
そう言うと、彼は魔法陣に手をかざし呟いた。
「
その途端、森全体が黒く染まり彼の周りに大量の影の異形が現れた。
「ふはははは!これでここはもう我が領地…」
私は冷めた声色で呟いた。
「…そうか、やってしまったか…じゃあ私の前から居なくなれ、屑が!」
私は懐から古びた懐中時計を取り出し、起動させた。
「
その瞬間、私以外の時間が止まった。
「…時間の前にはどんなものでも無力。たとえ、君がどんな力を持っていたとしても…ね」
私は喪失感に駆られながら、左腕を突き出し呟いた。
「…悪いな、消えてくれ怪物とゴミが。【アイシクル・ストリーム】!」
左手の前に魔法陣が形成され、そこからその余波だけであたり一面を白く凍らせるぐらい強い魔力が怪物と黒いローブの青年を一瞬で凍らせ、屠った。
哀れな彼は、自分の目的を達成することも無く自分の死んだという事実も知らないまま、塵も残さずこの世から消え去った。
そして、止まっていた時が進み出した。
「はぁはぁ…思ったよりも面倒だったね」
「え?なにが…起こったの…?」
クエルはいまいち状況が飲み込めていないようだった。
「さぁ、ここから離れよう。あの魔法陣の主さえ消えればすぐに元の森に戻るからね」
そう言って、私たちは箒に乗って森から抜け出した。
そして、森の入り口で、
「さて、この後君はどうするの?行くあてとかはあるのかな?」
「あ、あのっ!えっと…弟子にしてくれませんか!」
私は少しビックリして、考えてから答えを告げた。
「魔女なんてそんなにいいものじゃない。光も闇もある職業だよ。それでも、君がなりたいというのならついてきなよ」
「もちろん、ついて行きますよ。どこまでも、どこまでも」
と、彼女は屈託のない笑顔で言った。
「そうか、じゃあうちに帰ろうか。クエル」
「はいっ!師匠!」
そして私たちは、夕日の中を歩いて帰った。
「師匠、聞いてますか?」
私が物思いにふけっていると、クエルが呆れたように声をかけてきた。
「ん?あぁ、ごめんね。ぼーっとしてた」
「もう、また遅くまで起きてるからですよ!」
「あはは、ごめんごめん」
まぁ、こんな感じで私たちの日常は始まったばかりです。
(こんなふうに平和な日常も、悪くはないかな…ね、
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