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コツ、コツ、コツ。
「残り時間十分ですよー」
耳に心地よい声が教室に響く。それから、一定のリズムの靴音。
以前、クラスの女子が先生に訊いたことがあった。
『せんせーって、なんでハイヒール履いてるの? 学校で履いてもいいの、それ』
ギャルっぽいグループに囲まれて、先生は困ったように笑っていた。
『先生は身長が低いから』
身長が低いからハイヒールを履くのだと、先生は言った。
この学校には靴箱がない。ここは土足の学校だからだ。だから、上靴じゃなくて下靴で、もちろんハイヒールで学校生活を送っても一応は問題がない筈だ。先生としての立場的には、問題はあるかもしれないが。
それでも先生は毎日ハイヒールを履いていた。
美しいと思った。
教育者が学校内でハイヒールを履くと言う姿勢ではなくて、ハイヒールを履いた先生の姿勢が、立ち振る舞いが。
スッと伸びた背筋、響く足音、ハイヒールを履きこなす細くて魅力的な脚。
女性を美しいと思ったのは、先生が初めてだ。
そう、一目惚れだった。新任の紹介で、体育館で初めて見た時。胸がときめいた。きゅんと苦しくなって、その人にしか焦点が合わなかった。こんな経験は初めてだった。それもそうだ、まだ十五年しか生きていないのだから。
先生への片思い。そんな漫画の世界のようなことが自分に訪れるなんて思ってもみなかった。
「もう出来た人はもう一度見直ししてくださいねー」
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