第10話 夢見る少女を守りたい

目を開けて、夢から覚めて、久しぶりの現実はしっかり寒い。

ベットから飛び起きて、家を出て、そこにはいつもの見慣れた風景がある。

夢の中とは違う、見慣れた田舎の風景。

それでも、彼女がいるなら、ここが俺の居場所だ。


俺は走った、彼女に——四宮 鈴葉に会うために。



「ユメミヤはいるの!」

俺の話をずっと聞いていてくれた鈴葉が、突然叫んだ。

「いまだって、ほら、ここにちゃんといる」

鈴葉が自分の横を指して言う。

「違う、少なくとも、俺に鈴葉の名前を教えてくれたユメミヤはそいつじゃない。それはお前が創った架空の存在なんだ」

俺はユメミヤに任せろと誓った、そして『俺』自身にも誓った。

だったら、言わなきゃいけない。


「そう、だから、君に会わさせてくれたのも、ここにいるユメミヤじゃん」

鈴葉の目からは涙が流れていた。

もうこれで、鈴葉の涙を見るのは何回目だろうか?

もし、涙を流させているのが俺なんだとしたら、それを笑顔に変えるのも俺の役目だ。


「いるよ! ユメミヤはいる! いてくれなきゃ……困るの! ユメミヤがいなかったら、だれが……だれが私のそばにいてくれるの? だれが私を……守ってくれるのっ?」


「俺がいるだろ」


口が自然に動いていた。

自分でも、自分がこんなこと言うなんて信じられなかったけど、それでも、これが俺の本心だった。


「俺がいる。俺がそばにいる。俺が……楢崎 恭也が四宮 鈴葉を守る。鈴葉にもユメミヤにも俺はそう誓ったんだ。ずっとそばにいる。絶対に守る。……それじゃあだめか?」


「なんなの……なんで……そんなの、だめなわけないじゃん、……ずるいよ、かっこよすぎるよ」


鈴葉はまだ泣いていたけれど、泣きながらもそう言って笑ってくれた。

俺はそれがどうしようもなく嬉しかった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る