第5話 狂える世界で君に恋をした
「おはよ、今日は起きるの早いね。えらいえらい」
朝、起きるとスズハが部屋にいた。
「まあ、たまにはな。ちょっと下で待っててよ、準備するから」
「準備? なんの?」
「なんのって、学校」
学校に部屋着のまま行くわけにはいかないだろ。
「何言ってんの、今日月曜日だよ、学校は休みじゃん。土日が終わってせっかくの休みなのに、学校行くの?」
「あれ、今日月曜か、完全に日曜だと思ってた。じゃあ休みじゃん」
でも、学校だと思ってたのに休みだと、なんか得した気分だな。
「もー、しっかりしてよ。で、今日はどこ行く?」
「海とかどう? この前はプールだったし。せっかくの冬だから海に行きたくない?」
「いいね! じゃあ、いこ!」
扉を開けて海に着くと、俺たちは夕暮れまで遊んだ。
スズハといると、世の中のもの全部が楽しくなる。
やっぱり俺はスズハが……
*
実は最近ずっと考えてたことがあるんだ。
あと一歩がずっと踏み出せなかったんだけど、今、隣に座るスズハを見て決心した。
子供の頃からずっと思ってたこと、俺にとってスズハはただの幼馴染じゃなくて……
「綺麗だね、夕日」
スズハが海を見つめながら、そう言った。
俺にとってその一言一言が、些細な手の動きやちょっとしたまばたきですら、愛おしい。
「なあ、スズハ」
「なに?」
その言葉はとても自然に口から出た。
ずっと言いたくて、でも言えなくて、そんな言葉も最後はあっさり。
「好きだ」
うまく言えたかな? 大丈夫かな? 引かれたらどうしよう? 失敗したら?
言ったあとはすぐに、そんな不安が頭の中を支配した。
「うん、私も」
だから、俺はスズハの答えが一瞬聞こえなかった。
そうして聞き返してしまった。
「だから、私も好きだって」
「ホント?」
「ホントだって、ずっと好きだった、大好きだよキョウヤのこと」
それからのことはあんまり覚えてない。
すごい嬉しくて、すごい喜んで、これからが楽しみで、とにかく俺は幸せだった。
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