第5話 狂える世界で君に恋をした

「おはよ、今日は起きるの早いね。えらいえらい」

朝、起きるとスズハが部屋にいた。

「まあ、たまにはな。ちょっと下で待っててよ、準備するから」

「準備? なんの?」

「なんのって、学校」

学校に部屋着のまま行くわけにはいかないだろ。

「何言ってんの、今日月曜日だよ、学校は休みじゃん。土日が終わってせっかくの休みなのに、学校行くの?」


「あれ、今日月曜か、完全に日曜だと思ってた。じゃあ休みじゃん」

でも、学校だと思ってたのに休みだと、なんか得した気分だな。

「もー、しっかりしてよ。で、今日はどこ行く?」

「海とかどう? この前はプールだったし。せっかくの冬だから海に行きたくない?」

「いいね! じゃあ、いこ!」


扉を開けて海に着くと、俺たちは夕暮れまで遊んだ。

スズハといると、世の中のもの全部が楽しくなる。

やっぱり俺はスズハが……



実は最近ずっと考えてたことがあるんだ。

あと一歩がずっと踏み出せなかったんだけど、今、隣に座るスズハを見て決心した。

子供の頃からずっと思ってたこと、俺にとってスズハはただの幼馴染じゃなくて……


「綺麗だね、夕日」

スズハが海を見つめながら、そう言った。

俺にとってその一言一言が、些細な手の動きやちょっとしたまばたきですら、愛おしい。


「なあ、スズハ」

「なに?」

その言葉はとても自然に口から出た。

ずっと言いたくて、でも言えなくて、そんな言葉も最後はあっさり。


「好きだ」


うまく言えたかな? 大丈夫かな? 引かれたらどうしよう? 失敗したら?

言ったあとはすぐに、そんな不安が頭の中を支配した。


「うん、私も」

だから、俺はスズハの答えが一瞬聞こえなかった。

そうして聞き返してしまった。


「だから、私も好きだって」

「ホント?」

「ホントだって、ずっと好きだった、大好きだよキョウヤのこと」


それからのことはあんまり覚えてない。

すごい嬉しくて、すごい喜んで、これからが楽しみで、とにかく俺は幸せだった。

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