第1話 夢見る少年
「あ! やっと起きた。おはよ」
目を開けると知らない女の子がいた。
「……誰?」
「寝ぼけてるの? 大丈夫ですかー おーい」
女の子は俺の顔の前で手を振っている。
どうも状況が飲み込めない。
この子は誰? ここはどこ?
俺は誰? とはさすがにならなかったけど、やっぱりわからないことが多かった。
「ホントにおかしくなっちゃったの?」
俺がずっと黙っていると、心配そうな顔でその子は俺の顔をのぞきこんだ。
そうして目があっても、この子が誰だかはわからない。
「しょうがないなー、私はスズハです。幼馴染やらせてもらってます。よろしくお願いします。……これでいい?」
「え、あぁ、うん」
そうなんだろうか、この子は幼馴染で…… そうだよな、うん、そんな気がしてきた。
スズハ、耳にしっくりくる、聞きなれた名前のはずだ。
「まったく…… じゃあ早く学校行こ、遅刻するよ。下で待ってるから、早くしてね」
スズハはそう言って部屋から出て行った。
学校…… 行くんだよな、そう、学校。
いつも通りの毎日だ、クローゼットを開けたら制服がかかってて、靴下はタンス、スクールバックに荷物を入れたら、イヤホンを持って外に出る。
外に出たらスズハが待ってて、一緒に学校に行く。
さっきまでの俺は何を寝ぼけてたんだろう。
*
「だけどさ、毎日歩いて学校通うのめんどくさいよな。もう少し近いといいんだけどな」
「えー、私はキョウヤと歩くの楽しいけどなー キョウヤは楽しくないの?」
すっかり目も覚めて軽口を叩く俺に、スズハは少し笑いながら答えた。
「そんなことないよ、ただなんとなく近いといいなって思っただけ」
「そう、ならよかった。でも、そんなに近くしたいんだったら、すればいいじゃん」
「何言ってんの? 時々変なこと言うよ——」
——パチッ
俺の言葉を遮ってスズハが指を鳴らした。
「……えっ」
いったいどうなってるんだ?
何が起きた?
気づくと目の前には学校があった。
「どうしたの?」
スズハは本当に不思議そうに、何に驚いているのかわからないといった感じで聞いてきた。
「どうしたって…… おかしいだろ、なんで急に学校が……」
「だって、近い方がいいんでしょ?」
わけがわからない、どうなってるんだ?
「ねぇ、早くなか入ろうよ、寒いしさ」
そう言ってスズハは俺の手を引いて、昇降口まで向かった。
「だけど、十一月って結構寒いよね。あったかくしちゃおっか」
「ちょっと待って、そんなこともできるの? なんで?」
もう頭が追いつかない、なんなんだいったい。
「なんでって言われても…… それが当たり前でしょ?」
「は?」
「だから、近くしたかったら近くできるし、あったかくしたかったらあったかくできるのが当たり前じゃん。何言ってるの? 今更」
「そっちこそ何言ってるんだ、そんなことできるわけ——」
話終わる前に俺の体を衝撃が襲った。
なんだこれ、落ち……る?
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