第39話 僕の大切な人
「自分から来るなんて、君、意外と度胸があるんだね」
何もない平原の上にぽつんと立つ一つの人影。いつかに聞いたまるで子供のような声。
「……ラビッシュ」
「やぁ、千里。僕の大切な人」
「エイドの魂を返せ」
「それは願ってもないね。返すよ、ほら」
ラビッシュが懐から取り出した瓶。それをこちらに向けて投げた。あのラビッシュがエイドの魂を投げた?強い違和感を感じたけれど投げられた瓶が目の前に迫って来ていてそっちに気が逸れた。
「残念。それはね、アイの魂だよ」
「っ、――」
背後から聞こえた人をあざ笑うような笑い声。投げられた瓶を掴もうと伸ばされた腕ごと強く後ろに引かれた体。瓶は下に落ちてひびが入る。
「アイ!」
「僕がエイドの瓶をそんなぞんざいに扱うわけないでしょ」
とん、と首に衝撃があった。意識が遠のいていく。捕まれていた首根っこを離されたのか、体が前に倒れていった。ぼんやりとした視界に映ったのはアイの瓶。アイを守らないと。でも……体が動かない。
「さぁて。行こうか、千里」
次の瞬間、それは踏みつぶされた。
「あ……あ……」
「あーあー言ってないで。ほら、さっさと意識飛ばしてくれる?」
「あ……い……」
そこには暗闇があった。
「千里さん。ごめんなさい。私のせいで貴方を巻き込んでしまいました。本当にごめんなさい」
暗闇の中に光りがあった。そこには髪の長い、とても綺麗な女の人がいて、彼女はとても辛そうに涙を落としていた。
「ごめんなさい。ごめんなさい」
彼女は何度も何度も謝っていた。
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