第6話 彼ら
「お疲れ様でした、千里さん」
はぁ、どうもと片手で頭を押さえる。では場所を変えて話を続けましょうかと満足そうに笑ったマキシムに連れられて、初めて晴と出会ったあの円卓へと来ていた。
「どうぞお掛け下さい」
ペコリ、頭を下げて辺りを軽く見回した。そう言えば、先ほどから晴の姿が見当たらない。
「他の方は?」
「今日は仕事へ行ってもらっています」
「仕事……晴も?」
「えぇ、晴さんにも。本当ならパートナーであるあなたと行くべきなんでしょうけど、それはもう少し先になりますね」
「では彼女は一体誰と?」
「今回はアイさんと偵察に行って貰っています」
「アイ……あの鷲の人ですか」
「はい、彼は晴さんに続いて若いですからね、馬力があります。晴さんとの相性も悪くないので」
鷲と虎。本当に大丈夫なのだろうか。そもそも。
「アイさんは頭が鷲でしたが、」
「あぁ、千里さんは鷲になった彼しか知りませんでしたね」
「えぇ、ついでに言えば、なぜマキシムさんが獅子頭なのか、それも聞きたいです」
はっはっはっ、と一際大きな笑い声が上がる。そうでした、あなたは出会ったときからとても気にしていましたねと、細められる瞳に背筋が伸びた。いくら食べられることはないと分かってはいても、その顔は獅子。意味ありげな睨みは早々慣れるものではない。食われそうだ。
「彼らは魔術師です。あなたよりもずっと昔からここにいます」
「昔?それは一体どれぐらい……?」
「上は三百、下は五十。それぐらい昔からです」
「さ、三百? 三百歳ということですか?」
「えぇ、あの中ではオーイルさんが一番年上ですね」
オーイル。確か自分は鶏だと言っていた。しかし、その顔はどう見ても三十歳ぐらいにしか見えなかったのだが。長髪を後ろで三つ編みにし、一つにまとめていた。こちらを見る表情は澄んでいて微笑みは冷たさを帯びていた。
「話を戻しましょう。先日千里さんに渡したメモの通り、あなたはもう人間ではありません」
「は?」
「魔術師は人ではありません。人ではなくなった時点から時は止まり、年を取らなくなります」
あぁ、それでオーイルは。納得がいった。
「ただ、年を取らなくなったといって両手を離して喜んではいられません。魔術師はその歴が長くなるごとに体に異変が生じてきます」
「異変とは?」
「具体的にはアイさんの鷲化、私の獅子化ですね。その他の人も顔にこそ現れていませんが、どこかしらおかしな部分がありますよ」
「へ、へぇ……それはもしかして私たちに何か不具合があったり?」
「もちろんでございます。ですが、それを話し出したら長くなりますので、それはまた後日お話しましょう」
魔術師の末路、なんとなくそれを想像してしまい体が震える。悲惨な末路だったらどうしようか。今から戻……れはしないだろうな。
「では本題に入ります。魔術師についてもう少し詳しくお話します」
「お願いします」
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