第14話 何かがほしい。⑧
早速準備に取り掛かった。
まずはカメラの購入。
詳しいことなどわからないので、できる限り安価でいて有名なメーカーの品であればなんでも良かった。
次にゲストのオファー。
本来の目的は告げず三人ほど。
出来れば全員女性が好ましい。
そして場所の確保。
これは埼玉のホテルを押さえた。
本当であればスタジオのような洒落た箱が用意できればベストであったが贅沢は言わない。
あとは観覧者の厳選と案内状の配信。
傍観記の信者の中から見繕う。
準備は万端。
あとはやるだけだ。
香子は己に喝を入れた。
香子こと「のこ」は普段しない化粧を施し、変装用のカツラは敢えて自前の髪型とは打って変わってショートカットのものを用意した。
服装はなるべく本来の自分と遠いものをと思い、近所のアジアンテイストの雑貨屋でターコイズのネックレスと五百円サイズのピアス、麻地にノルディック柄なのかダマスクなのかよくわからないの柄が施されたワンピースを買った。
普段チノパンにTシャツの香子からしたらイメージチェンジと言うよりもコスプレだ。
埼玉は大宮駅。
時刻は18時丁度。
西口の広場で待ち合わせた。
律儀なあの連中は数十分前には到着しているだろう。
いた。
三人の男女。
傍観記のファンたち。
三人の男女には目印として各々指定した雑誌をもたせたし、こちらの服装も事前に教えてある。
5メートルまで近づけばお互いに気づいた。
「初めまして」
香子は軽く淑やかに会釈した。
三人もそれぞれ蚊の鳴くような声で応えた。
ネットの庇護を離れた途端丸裸になった様な気がして落ち着かなくなる人間は珍しくない。
もしくはこれから始まる「ショー」を前に緊張しているのか。
「それではこれからゲスト様と落ち合うので、お三方は先に現場に行って下さい。くれぐれも私たちと鉢合わせになる事のないようにしてください。」
香子が指示を飛ばした。
「はい、あの、一応携帯の番号教えとこうと思って、、、」
三人の中の一人、小太りだが服装はガーリーな女がメモを寄越してきた。
小脇に抱えているのは少年ジャンプ。
この女がレオナか。
香子は一目見て誰が誰だかわかる様に各自違う雑誌を指定して持たせていた。
ジャンプがレオナ、マガジンが月姫、サンデーが阿修羅と言う割り当てだ。
『たった今お三方と合流しました!
あとは今回のゲストの方々をお迎えにあがります!
今回の“面談ナイト”乞うご期待!』香子は歩きながらブログを更新した。
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