第8話 なにかがほしい②

中学ニ年の夏、構内では新たな勢力が生まれた。

それが所謂「ヤンキー」だ。


昨日まで目立たなかった子、どちらかと言えば香子がシンパシーさえ感じていたような子たちがこぞって髪を染め、ピアスを開け「クレヨンでやったの?」と言いたくなるようなクオリティの化粧で、何故かきちんと登校しながら校内の何処かでサボる。


そのヤンキーグループの中には小学校時代香子と仲の良かった女子もいた。


どちらかと言えば論理的な子であったし香子と価値観も近かったと思う。が、その子がヤンキーグループの色に染まり真夏にロングスカートで、気温35℃を超える中わざわざ屋上でタバコをふかしているのを校庭から目撃した時には

「あの子、頑張って馬鹿のフリしてるんだ。」

との感想を持った。


思えば誰も彼も「フリ」をしているのかもしれない。


あの子は馬鹿のフリをしてヤンキーグループに属し、オシャレさんやオタクちゃんやエリート様や熱血くんも以下同文だ。


そしてマユも。


病んだフリをして自分の居場所を見つけたんだ。


「何か」を得るには「何か」を演じなきゃならない。


その金言を得た、香子14の夏。


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