第6話 軽食がほしい。
しかし、とこの期に及んで更に穿って考えてみる。
例のコメントがのこに対するものではない事がわかった。
となるとこれは叶谷含む二人に対するコメント。
だとすると、あのタイミングはどうだったのだろう?
そもそも書き込まれたこの記事、それ自体は「最近寝不足」と言うタイトルの、なんのドラマ性もない惰性丸出しのブログである。
特段過去の記事に比べて陰鬱な内容でもない。
そこへきて「君はひとりじゃない」。
再び「邪推」と言われた感情が叶谷の中で脈打った。
どっちにしろ本文読んでねーじゃねーか!
そこの所を見落としてあろう事か平謝りしてしまった。
アメリカの刑事事件よろしく、一度無罪となった事件は同じ罪状で再び起訴されない。
一度謝罪し、鎮火した件を再び再燃させるのは客観的に見て如何なものか。
加えてこのしゅらと言う男は弁が立ちそうだ。
嘲笑まじりに軽くいなされるだろう。
口惜しさを抱えながらも叶谷は新たなクエスチョンに気がついた。
ではこいつの目的は?
そうだ。目的がのこでなくてあの発言は全く意図が読めない。
いや本当にそうか?身に覚えがないだろうか?
叶谷は記憶の引き出しを片っ端から開けた。
こんな流れのスレッドを何処かで見た事はないか?
そうだ、あれは某巨大掲示板でのことだった。
確かスレッドのタイトルは「メンヘルとの戦い○日目」とかそんな感じだった。
7割がスレ主を冷やかす、煽る、中傷まがいのレスポンス。
2割が本流とは関係のない駄文やコピペ。
そして残り1割の中に真剣な、俗に言う「マジレス」とそれを騙った宗教家などの「勧誘」だった。
既視感の正体はそれだろう。
さしずめこのブログをそのスレッドに例えるなら当然スレ主は叶谷。
しゅらはそう、「勧誘者」なのではないか。
叶谷の思案はそこに至る。
「しゅらさん、貴方は宗教家の方ですか?」
先刻あれほど慎重さを欲していた自分はもう過去のものかの如きスピードでしゅらへのコメントを打っていた。
高鳴る鼓動。手の皺から溢れんばかりの汗。
「どうした。本当にそうなのか?返事が遅い、、、遅い、、、遅い、、、」
叶谷は忙しなくコメント欄の更新を繰り返す。
そして何度目かの更新キーのクリックか。
「宗教、、ではないです」
おいおいおい、近いのかよ。
時刻は23時48分。
小腹が空いた。甘いパンかガッツリ目のおにぎりがほしい。
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