第6話 ガールズトーク

「お待ちしました。チョコレートキングパフェとストロベリーポンチと七色のアイスパフェです。」

ミント色のエプロンを着たファミレスの店員がウエハース色のテーブルに器用に置いていった。

「ありがと~」

エリカは店員に愛想よく手を振った。

「で、どうなんだよ。黒羽とは進展あったのか。」

万智は向かいの席にいるめいに詰め寄った。

「こら、万智はそんなオッサンみたいなこと言わない。なんともないのね。」

めいは顔を真っ赤にして頷いた。

万智は舌打ちしながらストロベリーポンチをスプーンでかき混ぜた。

「つまんねぇの。そういや黒羽ってどこの小学校出身だっけ。」

「…さぁ、わかんない。」

首を傾げるめいに万智はずっこけた。

「さぁって…」

「そういえば黒羽君って意外とクラスで影が薄いから情報もないのよね。」

エリカはかさ高いチョコレートパフェに乗ったトリュフをつまんだ。

「ホントに不思議くんなんだよな。てかそいつのどこがいいか理解できないし。」

万智に言われ、めいは口を開いた。

「わ…わたし、ちゃんとした記憶がいないんだけど、小学校何年だっけな…末広川で黒羽君に助けられた気がするんだ。…ずっと探してて…で、やっと見つけたの。」

もじもじするヨミに万智は鼻息を荒げながらスプーンを握りしめた。

「運命の王子様ってやつ?てことは末広小かな。」

エリカは思い出したように言った。

「あ、でもこの前ヨッコに末広小の卒アル見せてもらったけど、黒羽君らしき人はみつからなかったよ。」

一同は黙ってそれぞれのデザートを食べた。


 チョコレートパフェを半分食べてエリカは万智に話を振った。

「よそ様の恋バナに興奮するよりあなたはどうなのよ。」

「どう…って?」

さっきまで饒舌だった万智は急に挙動不振になった。

その様子ににやりと笑ってエリカは万智に耳打ちした。

「…み・う・ら・君のこと。」

飲んでいたシロップを噴出した。

「あっ…あいつまだガキじゃん。今日だって天原先生にセクハラなこと言って鉄拳制裁くらってたじゃん。」

「三浦君のことちらちら見てたの知ってるんだよ?」

「あいつは同じテニス部だし幼馴染だし…べっ別にそんなんじゃないし…」

万智は褐色に日焼けした腕を組み、焦りを隠した。

「えっ三浦君ってテニス部なんだ。がっちりしてるから柔道部かと思ってた。」

めいまで興味を示し始めたので、慌てて話を逸らすように万智はローズアイスを食べてるめいに話を振った。

「ヨミも女子会に連れてきたらよかったのに。」

「いいの。今日は健太兄さんと末広川で釣りだって。」

めいはじと目で溶けかけのチョコミントを口にした。


「…へっくしょっ」

そのころヨミは釣竿を持ちながら派手にくしゃみをした。

「誰か噂してるんじゃないの?ヨミちゃんかわいいとかとか。」

からかう健太に不機嫌な顔をした。

「んな訳ねぇよ。なんで健太兄ぃのほうが釣れてんだよ。もし俺が全然釣れなかったら缶ジュースおごれ。」

「それって逆じゃね?普通多く釣れた人の方が貰う方だろ。」

「だったら釣れるようになんとかしろっ」

「なんだそら。」

健太の釣竿が下がった。


「きのこの森みっけ。ここのファミレスってたまにデザートにきのこの森が紛れてるのよね。」

エリカはうれしそうにパフェに入っていたチョコレート菓子をひとつ取り出して二人に見せた。

「実は私のは3つ入ってたんだよん。」

めいは得意げにきのこの森を小さな皿に3つ置いた。

「ずるーい。あたしより多いじゃん。なんかヘコんだし。」

と言いながらめいのきのこの森をひとつ食べた。

「こらっエリカのぶんあるでしょ。」

万智もひとつ食べた。

「二人ともひどいっ」

二人にきのこの森を取られ、めいは涙目になりながら最後のひとつを食べた。


 エリカのスマホの着信音がした。

「はい、…あ、エリンギね。帰りに買うから。」

話を聞いた二人は興味津々でエリカを見た。

「声低かったよ。」

「もしかして彼氏ぃ?」

エリカはスマホをカバンに閉まって微笑んだ。

「あ、ばれちゃった?雅夫から。」

「エリカの弟かいっ」

二人はずっこけた。


店を出て三人は満足そうに互いの顔を見合わせた。

「まっ、私たち中一だし青春はこれからなんで明日からがんばりましょっ」

三人は円陣を組んでそれぞれの家に帰った。

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