コトワザのワザ
尻鳥雅晶
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ことわざとか格言とか金言とか(メンドくさいから以後コトワザとします)の存在意義は何だろう、と思ったことはありますか?
あくまでも私見ですが、その役目というのは、次の3種類ではないでしょうか。
1.啓蒙
2.癒し
3.優越感
「啓蒙」とはそのままの意味、生きるための指針となる言葉です。
「癒し」というのは、迷いながらも生きている人や、その言葉通りに生きていると思っている人を、それでいいのだ、この生き方で間違っていないのだ、と癒し勇気付ける効用がある、という意味です。
そして「優越感」とは、オレはこの言葉の通りに生きてるぜ、だからオマエもオレに見習うがいい、とドヤ顔で言う意味です。
実態はともかくとして、ね!
さて、私が面白いと思っている点が、コトワザにはあります。
コトワザには、相反する複数の意味があるものがあります。なぜなら、そのコトワザを生み出した人と広めた人の人生観が違うからです。
ということは、どんなコトワザに注目するかによって、そこにどんな意味を見出すかによって、逆にその人の人生観が露わになるのではありませんか?
例をあげましょう。
ご存知の方も多いでしょうが、「情けは人のためならず」というコトワザには、
本来の意味であるものと、広く流布しているものの2つの意味があります。
仮に前者をAタイプ、後者をBタイプと分類します。
ド忘れした人のためにいちおう解説をしておきます。
(気遣いのデキる男の発言ですね!)
Aタイプは、
「他人に情けをかけることは、回りまわって自分のためになるのだから、他人には情けをかけるべきだ」
という意味です。
Bタイプは、
「他人に情けをかけることは、その人の自立を妨害するから、他人には情けをかけないべきだ」
という意味です。
どちらが好きだとか、どちらが正しいとか言っているのではありません。
(言いたくないのでもないけど)
ほぼ正反対の、そのような違いがあることが面白いのです。
Aタイプ。
助ける労力を厭わない人、自立をそれほど重要視しない人、
人間は助け合うものだと信じている人、他人に甘い人、
他人に助けられたことのある人、言葉の成り立ちにこだわる人、
そのいずれかに当てはまる人、あるいは人からそう見られたい人は、
Aタイプを自然に受け入れ、それが本来の意味であることを納得するでしょう。
Bタイプの意味しか知らなかった場合は、このコトワザそのものを軽視するでしょう。
Bタイプ。
助ける労力を惜しむことに言い訳が欲しい人、自立を重要視する人、
人間は所詮ひとりであると信じている人、他人に厳しい人、
他人に助けられたことなどないと思う人、言葉の普遍さにこだわる人、
そのいずれかに当てはまる人、あるいは人からそう見られたい人は、
Bタイプを自然に受け入れ、それが一般の意味であることを納得するでしょう。
Aタイプの意味しか知らなかった場合は、このコトワザそのものを軽視するでしょう。
私は「日めくり尻鳥」という、コトワザだか何だか判らない作品を書いています。
これは基本的にフィクションです。
どの言葉がそうだ、とは言いませんが、ダブルミーニングも偏見も皮肉もあります。
自分への、きっついブーメランもな!
それでも作品の体をなしている以上、そこには作者そのものが透けて見える気がしても、あながち間違いとは言えないでしょう。
そこが面白い、とは思いませんか。
そして更に、書いた目的のひとつは、これを読んだ貴方自身の人生観について色々と思い馳せて楽しむ、ということです。
深淵を覗き返すがごとく。
それではどうぞ、日々「日めくり尻鳥」をお楽しみください。
コトワザのワザ 尻鳥雅晶 @ibarikobuta
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